第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
<海の上>
承太郎の活躍により、DIOの刺客をなんとか倒したジョースター一行。
しかしシンガポール行きを妨げられた。
由来の活躍により、ケガ人は出ずに只今漂流中である。
大きな氷の上には、6人と小さな子供1人と船員10人が乗っている。
救助信号を送ったので、待っていればその内救助が来るはず。
プカプカ……
由来は氷の上で、海をじっと見つめていた。
「お前の迅速な判断のおかげで助かったぞ由来」
後ろからジョセフが声をかけた。
「いえ……私は私なりに出来ることをしたまでです」
敵を倒した承太郎の方がよっぽどお手柄だと思った。
「この氷の上、あまり揺れねえし安定感があるぜ」
ポルナレフは試しにその場でピョンピョン跳ねてみた。
ツルンッ ドガッ
「いてッ!」
しかし調子に乗ったせいで滑って転んだ。
「ポルナレフ!万が一ひっくり返ったらどうするんだ!」
アヴドゥルが注意するが、氷はビクともせずとても頑丈だ。
確かに冷たいのと滑るのを除けば、地面とそんな変わらない。
「大丈夫ですよ。安定するように計算して、海面だけでなく海中も凍らせました」
由来はアヴドゥルみたいに癇癪は起こさず優しく言った。
彼女は冷静だ。その精神的な強さがスタンドパワーに比例しているのかもしれない。
「それにしても驚かされたぞ。これほど広範囲をあんな瞬きほどの速さで」
近距離型でもこの攻撃。ただ者ではないことは薄々思ってたが、まさかこれほどとはな。
「海の上を走ったのも、足の下の海面を凍らせたのだな」
「…えっと…それは……」
由来は言葉を濁した。
「こ、今回は運が良かっただけです。私の氷結の射程距離はよくて5mです。ただ、条件によっては、ホワイトシャドウの氷結範囲が上がるんです。例えば“水の上”。地上でも雨上がりの地べたなら有利です」
つまり、その環境によって能力の優劣が変わる。灼熱地獄の砂漠となれば、圧倒的に不利になるということか。
「じゃあ…もし君があのまま、射程距離内にジョジョがいたまま海を凍らせていたら……」
「海と一緒に、氷のオブジェになっていたかもね。あの時は説明する暇がなかった」
平然と言う彼女に花京院は少しぞっとした。それに対し、承太郎は他人事のようにやれやれと呟いた。