第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
それを含め由来は、またまた承太郎の凄みを見せられたのであった。
「やはりわしの孫じゃ」
ドオ~ン!
『!』
後ろがいきなり爆発し、皆一斉に振り返った。
甲板だけではなく船内も次々に。
「や……やはりあの船長。爆薬をしかけてやがった!畜生!」
「みんな!早くボートに!」
「たッ、大変です!救命ボートがありません!」
1人のクルーが慌てて来た。
そこには、あるはずの緊急用ボートが1隻もなかった。
偽船長がクルーたちの目を盗んでこっそり海に流したに違いない。
爆弾の上に、漂流に欠かせない小舟までも奪うとは。皆まとめて海で溺死するよう細工したってわけか。
(マズいぞ!このまま海に飛び込み爆発から逃れたとしても、長時間浸かれば低体温症になりどっちみち危険だ!)
海にはサメもいる!どうすれば!
ジョセフは、現在進行形で壊れる船の上で得意の策士を練ろうとする。
「何をしている由来!」
由来は手すりから数歩ほど距離をあけ、ランナーが走る直前のような姿勢をとっていた。
・・・・・・・・・・・・・・
「降りる準備をしていてください」
バッ!
手すりを踏み台にして海に向かって思い切り飛んだ。
「なっ!」
全員彼女に釘付けになった。
スタッ
しかし、海中には入らず海面の上に立った!
『!』
そして承太郎と船から自分の距離を確認してから、反対方向へ駆け出した。
「み、水の上を走っているゥ?!」
ポルナレフは幻ではないのかと目をこすったが、間違いなく海面を走っていた。
ズザザーッ!
そして“ある”ポイントに立ち止まった。
スゥ……
「半径15mってとこか……」
ヒエェ~
由来はホワイトシャドウを半透明の状態で出すと、彼女を中心に冷気が輪のように広がった。
“氷撃”(アイスシャドウ)
パッガキィーン!
(!)
一瞬で海面が氷の床へと化した。
彼女を軸に承太郎と船を接点に15mほどの円ができた。
「皆!早くこれに乗れ!」
ジョセフたちは急いで氷の上に避難した。
由来はすぐ承太郎の元へ行き、手を差し出した。
緊急事態なだけあり、承太郎はその手を取った。
(コイツはたまげたぜ…)
なんて速さだ…