第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
「今のはスタンドだッ!」
こんな海の上で?どんな遠距離タイプでも、陸からここまで操れない。
つまり、本体はこの船にいる。今怪しいのは…
全員密航者の少女を見た。
状況からしてこの子しか考えられない。まさか、承太郎をおびき寄せるためにワザと海に…
少女は周りの視線が気に障り、さっきと同様生意気な口をきいた。
手元から小刀を抜き、挑発的な言葉を吐いて、警戒心丸出しだ。
「タイマンで来いッこのビチグソがァ!」
しかし、どっからどう見てもDIOとは全く関係ないただの元気なくそガキにしか見えない。
妖刀だ慟哭だ若干中二病臭いセリフに、花京院もつい笑ってしまうほどだ。
「この女の子か?密航者というのは」
そこに船長がやってきて、少女を力づくで取り押さえた。子供だろうと違反者には容赦なしだ。
持っていた小刀は甲板の床に落ちた。
ついでに承太郎が喫煙していたところを、その場にそぐわない行動は慎むよう注意した。
未成年がタバコを吸ってるのは違法な前提だが、プロを意識した一連の行動だった。
「ああ、そうそうそうだ。そこの君。すまないが聴取したいことがあるため、ご足労願うよ」
「!」
今度は由来に呼びかけた。
「聴取、ですか?」
身に覚えがなく聞き返した。
「操縦室の隣の部屋だ。何、そんな大したことではない。すぐ終わる」
「……分かりました」
ついていこうとしたその時、
バッ…
「!」
承太郎は由来の腕を掴み、自分の背後に隠した。
(え?)
腕をがっちり掴まれているため、由来は身動きが取れなくなった。
「何だね君?」
「……」
承太郎は彼女の腕を離す気はなく、船長を睨み返し、また空気がピリピリする。