第4章 “暗青の月”(ダークブルームーン)と“力”(ストレングス)
随分と口が悪く、大人相手にすごく反抗している。
「お…おねがいだ。シンガポールにいる父ちゃんに会いにいくだけなんだ」
そうすがっても現実はそう甘くない。
いくら子供でも違反であることに変わりはない。
「やっぱりだめだね。ヤーだよッ!」
少年はケチなクルーにムカッ腹がきて、腕に噛みついた。
ギニヤァァッ
そのまま勢いよく海に飛び込んだ。
「おほ~っ飛び込んだぞ…元気いーっ」
「陸まで泳ぐ気だ」
「どうする…?」
承太郎はほっとけと言ったが、
訓練されて体力がある水夫ならともかく、ただの子供がこんな広い海泳ぎきるなんて不可能だ。
由来は心配になる。
ベテランクルーたちを見ても、誰も助けにいくような感じもない。
(助けにいった方が…)
そして、最悪なことに気がついた。海のど真ん中ってことはつまり…
「まずいっスよ!この辺はサメが集まっている海域なんだ!」
クルーの1人が声を上げ、由来は海に飛び込もうとした。が、
(ホワイトシャ……え?)
子供の方にはすでに、サメの大きな影とその背びれが迫っていた。
「ワアァァァ!」
ようやく自分の状況のヤバさに気付き、食べられると悟った、その時…
バキィア~
おらおらおらーッ
瞬間、サメは宙に舞った。
まるでサンドバックのように殴られ、向こうまで飛んでいった。
状況が理解できず呆けていたら、誰かに服を掴まれた。
それは、誰よりも先に海に飛び込んでいた承太郎だった。
その凄まじいラッシュはスタープラチナによる攻撃。
サメに罪はないし血だらけのズダズタになり心苦しいが、何とか子どもは無事だ。
「やれやれだぜ。くそガキ」
ついでにこのどたんばで、その生意気な子どもは少年ではなく少女だと発覚した。
(な…なんて速さだ…)
由来は承太郎のスタンドだけではない速さに驚きつつ、胸をなで下ろした。
しかし、そんなのもつかの間。
何かが、向こうのサメの亡骸を引き裂いてこっちに向かってきた。
「じょ。承太郎ッ!か…海面下から何かが襲ってくるぞッ!サメではない!す…すごいスピードだ」
承太郎は子供を抱えて急いで泳ぐが、船までは到底間に合わない。
「あの距離ならぼくにまかせろッ。“ハイエロファントグリーン”っ!」
花京院が間一髪2人を引き上げた。