第14章 小さなお別れと告白
ホテルラウンジにて。
「……ハァ」
1人憂鬱そうにため息をこぼし、休暇を楽しむホテルには似合わないシケた表情で居座る者がいた。
スタンド使いの女 由来は、他の一般客の中の一番隅の席で、黙って景色を眺めていた。
あの後、承太郎との会話が終わり、当の本人は何事もなかったかのように、そそくさホテルへ戻ろうとする。
『ちょ、承太郎。今の言葉、どういう意味なの…?』
『……』
承太郎は由来の方へ振り返る。
しかし目は合わせず、バツが悪そうにして、吐くように言う。
『……2度も言わせんな』
『?』
そして承太郎に続いて由来も仕方なくホテルの中へ戻り、こうしてラウンジで1人クールダウンしているということだ。
上階の方からの景色は、街明かりがガラス越しに綺麗に映っており、誰かといるより独りでこうして物思いに耽っている方がよっぽどいい。
(そもそも私は、
・・・・・・・・・・
最初から独りだからな……)
ポルナレフがホルホースと対峙した際と同じような思考回路になっていた。
望んでもいないお節介を焼かれて、敵に奇襲を仕掛けられるよりも居心地が悪い。
しかもよりによって、「お節介」という言葉に一番遠そうな男にされるなんて…
(承太郎……)
『おめーのそこんとこは、嫌いじゃあねえが』
『俺も好きな方だがな』
投げかけられた言葉が勝手に思い出される。
・・・
勘違いだと思い込みたい。でも、いや、明らかに……
『俺がお前の右目の代わりになってやる』
あんな言葉を口にするなんて、それってもう……
(も、もしかして……承太郎"も"私の事__)
スッ
「!」
背後の死角にスタンド使いの気配がして、思わず"白の陰影"(ホワイトシャドウ)を構える。
「やあ。由来」
振り返ると、そこには花京院がいて、手を挙げて接してきた。
「……流石、忍者みたいに隠密行動が上手だね。花京院くん」
そうだ。よくよく考えたら、承太郎と私を引き合わせたのは、この人が日本で奇襲を仕掛けたからだ。
花京院くんがいなければ、"私達"(私と承太郎)は出会う事は無かったのかもな……