第14章 告白と小さなお別れ
(え?承太郎…?)
その手繋ぎは由来の口を封じるのに十分過ぎるくらいの衝撃を与えた。
その隙に承太郎は、"ある先手"を打った。
「日本でやってくれと頼んだんだ」
『?』
その場にいる皆が一瞬、困惑の色を見せる。
「慣れねえ土地だと、音感に多少の違和感がある。だから最適のコンディションでまた頼むことにした。それだけだ」
承太郎は淡々と簡潔に説明をした。
皆の表情が和らぎ、「ああなるほど」と納得の声を次々に上げる。
「楽しみはあとで取っておくってことか。確かにそういうこだわりじみたのは、君らしいな」
花京院はそう言い、ジョセフは心の中で思う。
(そうか!大事な用事で2人きりになったのは、それを頼むためじゃったのか)
皆の前で頼み込むのは、恥ずかしかったから。
彼女の演奏を独り占めするために嘘をついた。
ポルナレフはそんな承太郎の思惑を理解して、さっきとは真逆に親近感が湧き出てきた。
「何だ。結構可愛いとこあるじゃあねえか。そんなに由来の演奏にとことんこだわりてえのか?」
「フンッ」
皆の声色がそうやって明るくなる中、その中心人物は未だ口が止まっていた。
(いや、ちょい待て。いつ誰がそんな話した?)
由来はごもっともな疑問を抱いて、能力を使っていないにも関わらずフリーズしていた。
記憶が確かであれば、承太郎は調子が良くなかった私を察して、その場を退けたのだ。
以前とピアノのタッチが僅かに違うことに、あの場で気付けたのは、スタープラチナを持っている彼だけだったから。
それを1時間前とつい最近に聞かされたばかりなのに、当の本人はすでに忘れたのか?
(一体、何のマネなの……?)
「由来」
「!」
当の本人の祖父であるジョースターさんに声をかけられた。
「今更言うのもなんじゃが、孫と仲良くしてくれてありがとう」
「え…?」
「君の演奏は本当に凄いからのう。2度聴かせてもらって確信した。その才能は日本でも、いや、ひょっとしたら世界に通じるものになり得るかもしれん」
「……そんなんじゃあないですよ」
由来は目を逸らして俯き気味になる。
そんな大層なものでは…決して……