第14章 告白と小さなお別れ
ジョセフは承太郎の方に話題を逸らす。
「やけに親切じゃあないか?今度はワシにも持ってきておくれよ」
「てめーは自分でやれ。人の親切に便乗すんじゃあねえ」
眉間に皺を寄せて、明らかに由来の時と態度が変わる。
しかしジョセフは分かっていた。
片目の由来が珈琲など熱いものを運ぶのは、怪我をする恐れがある。
だから承太郎が、自分のを持ってくるついでを装って、わざわざ彼女のために持ってきたのだと。
(本当は心の優しい孫だということは、ちゃ〜んと分かっているからのう)
ニコニコ
孫に甘えられなかった後とは思えない顔になっていた。
(何で断られて嬉しそうなんだろう?)
由来はそう思いながら、程よく冷えたアイスコーヒーを喉に通す。
やはり冷たい物を飲むと、気持ちが落ち着いて、文字通り冷静になれる気がする。
傷の冷却だけでなく、照れ隠しもできることは、今日の戦いでも実践済みだ。
(自分でもどうにもできなくなったら、こうやって身体の熱りを誤魔化すか……あまり身体を冷やすのは良くないが…)
両腕がウォンテッドのスタンド呪いに犯されていた時は、痛みを紛らわせるために、2年近く冷やしていたが。
するとポルナレフが承太郎を指差して話す。
「てか、もしかしてさっきィ、由来の演奏断ったことで、埋め合わせでもしてんじゃあねえのか?」
「!」
周りの視線の注目が承太郎に集まる。
親切にするのは、後ろめたさがあるから。
浮気をしている旦那が本妻にらしくなく花束を買うような感覚があるのではないかと、ポルナレフは疑った。
「いくら由来がてめーとは違って、根に持たねえタイプだからってよォ、やっぱあん時は……」
「いや!違うんですッ…!」
『!』
今度は、左隣の私に注目が集まる。
私はポルナレフさんの声を遮ってでも、声を張るほどにその事実を否定したかった。
何故ならあの時、承太郎が自ら嫌われ役を買って出たような真似をしたのは、親切そのものだったから。
自分のせいで他人が蔑まれるなんて、冗談じゃあない。
「違うんです。私が___」
ガッ
(!)
右手に何かが当たった感触があり、言葉が途切れた。
思わず見下ろしたら、承太郎がテーブルの下の空間の死角で、私の右手を取っていた。