第14章 告白と小さなお別れ
「!」
隣にはすでに承太郎が帰ってきていた。
手元には、コーヒーカップを二つ持っていた。
「ん」
その一つを私に差し出すようにして、テーブルに置いた。
「え?これ、私の……?」
「さっき言ったじゃあねえか。好きだろ?」
そう言いながら承太郎は自分の席について、コーヒーを啜る。
「え、そんなこと言っ……」
由来が言いかけると、記憶がピシャリと音を立てた。
『えっと、好きっていうのは、人として好感が持てるってことで、あれだよ。珈琲が好きみたいなそんな感じで』
承太郎の言う通り、確かに言った。それは、
・・・・・・・・・・・・・・・・
承太郎のことを好きだと言った時の苦し紛れの比喩表現だ。
(え…つまり……えッ…?)
香りの煙が立つ珈琲から承太郎の方に視線を上げる。
それは、いつもの能面から少し和らいだ表情で、その口から息を吐くように出た。
・
「俺も好きな方だがな」
そのらしくない柔らかい表情と、私の気持ちに寄り添うようならしくないたった一言のセリフは、
少なくとも、さっきの私のセリフを否定しているようには思えなかった。
まるで、私の好意を受け入れてくれるような、そんな錯覚に陥ってしまうほどに、
私はすでに、彼に惹かれていた。
感情の光から目を逸らすようにして、珈琲カップを包み込むようにして手を組む。
(……ポルナレフさんの言う通り、
・・
マジだったんだな)
カアァッ
そんな自覚が芽生えてしまい、私の鼓動は徐々に激しくなってきた。
「む?おい由来。何しているんじゃ?」
ジョセフが由来の手元を指差して言った。
キィィィーッンッ!
由来が持っているコーヒーカップが、急速冷凍されるようにして、中の珈琲が氷と化しているのだ。
「……いえ。その、アツアツなので、アイスコーヒーにしているだけです」
「アイスコーヒーっつーか、本当にアイスのコーヒーになってんじゃあねえか?」
いつもおちゃらけるボケ気味のポルナレフでさえも、ツッコんだ。