第14章 告白と小さなお別れ
一方その頃、
自分の部屋なのに追い出された小さな少女アンは、ホテル内をうろうろしていた。
(あ〜あ。承太郎。いつになったら由来に「好き」って言うんだろうな〜)
外の店で買った日本製のチョコレート菓子を口に含み、コロコロ口の中で転がした。
高級志向のホテルの雰囲気で、安価なお菓子を食べるのもまた一興だ。
「……ハァ」
自然とため息が出てしまう。
片想いの相手が、自分とは違う別の女の子に気がある。そんな気がしてならない。
(私が承太郎を見る度に、承太郎は由来を遠目で見ていることが多いのよ。脈アリに違いないのよ…!)
それに由来さんと部屋で2人きりになりたいなんて……
ショックに思うけど、応援したいと心から思う。それは確かだわ。
今私にできることは、承太郎が由来さんの部屋にいるのを、他の誰にも邪魔されないよう見張っていることだわ。
そんな矢先、ロビーに続く降り階段の突き当たりのところで、ジョセフと鉢合わせする。
「アンか。お、うまそうな菓子を食べているな。誰かに買ってもらったのか?」
ジョセフはアンの手元を指差して聞いた。
「うん!まあねえ〜!おじいちゃんも食べる?」
好きな人からのご褒美だと心の中で自慢して、包装の開け方をジョセフに向ける。
「じゃあ1つもらおう」
愛娘を奪った日本人や日本が好きじゃあないジョセフだが、日本製のお菓子もまあまあ口に合った。
「夕飯前じゃから、間食はほどほどにな。そういえば承太郎と由来を見かけないんじゃが、どこにいるか知っておるか?」
ドギッ!
アンは緊張で心臓が高鳴ってきた。
そうだ。夕食はこのホテルの1階ダイニング会場で、ジョースターの名前で19時に予約していたんだった。
その10分前くらいにロビーで集合だと、ジョセフは皆に言っていたのを思い出した。
「え、えっと……」
「む?何か聞いておるのか?」
アンはしどろもどろしてしまい、誤魔化しきれなかった。
(え、えーっと。確か、余計な心配がかからないよう、由来さんが倒れて運ばれたことを言わなきゃいいんだよね?)
アンは敢えて、真実を交えて答えることにした。
「じょ、承太郎は、由来に大事な話があるって、少し用事で出かけているわ…!!」