第14章 告白と小さなお別れ
由来は足元にかかっているシーツを無意識に握り、承太郎に向かって頭を少し下げた。
「……ごめん。迷惑かけて」
「いや、気にするな」や「もう無茶はするな」と、由来はそう言われるものだと思っていた。
しかし、承太郎から言われたのは、全くもって想定外の言葉だった。
耳を疑うような疑問だった。
「……俺のことが苦手か?」
由来は顔を上げた。
承太郎の表情は、相変わらず無に近い。
聞き間違え?
「え。ちょい、どういうこと?」
「言葉の通りだ」
「だから急にどういうこと?私が、承太郎を?」
由来は自分のことを指差す。
居ても立っても居られず、さらにベッドから立ち上がり、承太郎と向き合う。
「……何を根拠にそんなことを言うの?」
第三者が立ち入ることができない空気が漂う。当事者である由来でさえも、びくついていた。
承太郎に
・・・・・・・・・・・・
そんなことを言わせる原因が自分にあるのだとしたら、それこそちゃんと謝らなければならない問題だと。
しかし心当たりはあった。
戦いの度、承太郎に対して毎度といい、畏怖の念を感じていた。
敵でなくて良かったと思ってしまうほどの強さが、彼にある。
肉体的にも、精神的にも。そして、頭脳的にも。
だから、距離を取っていた。過干渉をされるのが怖かった。
それは承太郎に限らず、ジョセフや他の人達も同様だったが、特に承太郎を意識してしまった。
"それ"を悟られたのかもしれない。
(違う。そんなつもりじゃあない。私は……)
「お前は前言ったな。俺に羨ましいと」
「!」
それは覚えていた。シンガポールで由来が承太郎に言った。
後天的にスタンドを持ったとはいえ、家族に囲まれて、愛されていることは、とても素晴らしいことだと。
裏返して言えば、そんなものを持たない自分は惨めで哀れだ。
「"羨望"は裏を返せば"劣等感"だ。お前は、恵まれている俺に対して、「ずるい」と、いや「憎い」と思ったことがあるんじゃあねえか」
「……」
無いと言い切れなかった。
しかし、違う。それだけじゃない。
由来の顔色が変わった。