第14章 告白と小さなお別れ
(き、気ッまずい……)
そんな一方で、由来は全く良い青春を送っていなかった。
同じ部屋に同い年の男子と2人きり。
その男子はベットそばに置いてある椅子に腰をかけて、こちらをじーっと見ている。
今まで感じたことのない緊張感を絶賛体験中だ。
異性にドキドキしているというよりかは、承太郎のその眼力の強さにビビっていると明言した方が正しい。
目を合わせたくなくて、由来は天井に目を逸らしていた。
「おい。どこ見てやがる?」
「天井のうねうねを数えている」
由来に釣られて承太郎も見上げると、確かに天井には波線のデザインの模様が貼られていた。
「…‥それ楽しいのか?」
「考えようによっては。片目のリハビリにもなるかもしれないし」
「首が疲れるだけじゃあねえか?」
「つまらない授業受けている時によくやるんだよ、私」
と、本当は緊張感を紛らわすために、わざとアホのようなフリをしているだけに過ぎない。
(あー承太郎に休めって言われたけど、全然休まらねー……)
寝具の上でぎこちない体育座りをして壁にもたれかかっているけど、そのそばの椅子にかけて脚を組んでいる承太郎が気になって仕方がない。
そういえば、よく考えたら、シンガポールでも同じことがあったな。
(せめて部屋で1人きりだったら休めるのに……)
承太郎が部屋から出ないのは、体が不調な私に刺客が襲ってきた時のためなんだろうな。
私を、守るために……
ドクンッ
え……
由来の感情が奇妙な形に変わった。
緊張でも困惑でもない、全く別物。それは、"喜び"。
・・・・
(私、何で、嬉しいの…?)
「で?体調は、さっきよりましか?」
由来はようやく承太郎と目を合わせる。
「うん。おかげさまで……また助けてもらうなんて、思わなかったよ」
承太郎は少し間を置いてから言った。
「おめえのピアノで分かった」
「え?」