第14章 告白と小さなお別れ
「おい」
承太郎が呼んだのはアンの方で、由来に親指を向けて言う。
「おめーはポルナレフたちと先に合流して、会場に行っとけ。俺は少ししたら、コイツと一緒に向かう」
「!」
時計を見たら、もうすぐで夜の6時半で、夕食が準備され始めている時間だ。
広いダイニング会場で、ジョースターの名前で予約を取っているため、そろそろ行かなくてはならない。
由来はベッドから立ち上がろうとしたら、承太郎が刺すような視線で止める。
「てめえは休め。また倒れた時に襲撃されるなんざ2度とごめんだ」
「うっ……」
インドでのウォンテッドの戦いことを言われ、痛いところを突かれた。
あれは成り行きがどうであれ、あの時は承太郎に多大な迷惑をかけた。ある意味黒歴史だ。
他人に迷惑をかけんばかりに、スタンドの事情や自分の体のことでさえも何も話さなかった。
自分だけで戦って、逆にまたさらに迷惑をかけた。
あれから少しは反省はしているつもりでいる。
アンは承太郎と由来の間の並々ならぬ空気を察知する。
介入すべきでないと思い、素直に従った。
「そ、そうね。由来さん、きっと貧血気味か、長旅の疲れが溜まっているんだわ。じゃあ先に行ってるからね。由来さんをよろしくー」
笑顔を振る舞って、手も振った。
部屋を後にして、扉が閉まった途端、その笑顔が消えた。
その曇った表情は、まるで失恋した乙女の複雑な感情を醸し出していた。
(承太郎……
・・・
あんな顔もできるんだ)
ドアを開けたら、意識がない由来を両腕で前に抱えていて、びっくりしたわ。
『どうしたの?!由来さん大丈夫?』
『どいてくれ』
すぐさま由来さんをベッドに下ろして、容体を見ていたけど、
あの時の承太郎の目には、由来さんしか映ってなかったんだろうな……
アンは口角を少し上げた。
(由来さん。早く元気になってくれるといいなあ。体だけでなく、心もね)
由来さん。まだ自覚してないだろうけど、思っている以上に、承太郎のこときっと……
(ま、良い青春をねッ!)
同じ女としてのエールを人知れず密かに送った。