第14章 告白と小さなお別れ
「………う」
左目を瞬きする。
景色の輪郭がはっきりと見えてくる。天井だ。
(え、ここは……)
上体を起こして、辺りを見渡す。どこの角度を見ても、紛れもなく私の部屋だ。
由来は右目の眼帯ごと、覆うようにして頭を抱えた。
右目を負傷してから、それが彼女の癖で、動揺した時の落ち着きのサインというところだった。
(一体、誰が私をここに……)
ガチャリ
「!」
玄関口が開く音がして、上体が強張った。
「あ!由来さん!起きたのね!」
入ってきたのはアンで、全身の筋肉が緩む。
私と目が合った途端に、安堵の笑顔を浮かべており、その両腕にはペットボトルを4,5本ほどいっぱいに抱えている。
「由来さんの好きな飲料水、いっぱい買ってきたよ!ミネラル成分たっぷりのいいやつね!」
「あ、ああ……ありが、と?」
部屋に備え付けてある小型冷蔵庫に入れていく。
「もう体調は大丈夫なの?」
「う、うん。それより、誰が私を……」
「ここだ」
!!?
言いかけたところで、扉のそばにいる本人が答えた。
誰よりも威厳のある声色で、隠し味に優しさもこもっているような声だ。
承太郎が腕を組んで、こちらを見ていた。
(え……ゑ…e??)
二度見する。
思考がバグを起こし停止する。
再起動する。
ピアノ演奏の時、皆より一足早く部屋に戻ったはずなのに、何故か私とアンの部屋の扉のそばにいる。
「な、何でこんな場所に…?」
「そりゃあてめえが今質問した答えだからだ。それに「こんな場所に」って、てめーの部屋じゃあねえか」
承太郎が突っ込んだ。
(じゃあ、承太郎が私を見つけて……)
由来はお礼を言おうとするが、疑問が頭をよぎった。
(ちょっと待って。承太郎の部屋は、確かジョースターさんと同じ2階だったはず。そして、私が気を失ったのは、この自分の部屋がある4階に繋がる階段のところだ)
つまり、承太郎は自分の部屋から
・・・・
意図的に4階まで上がって、そこで気を失った私を見つけた、というわけだ。
まさか、私が気絶するのを
・・・・・・・・・・
初めから分かっていたとでもいうのか?