第14章 告白と小さなお別れ
「カァ〜、相変わらず承太郎はノリが悪いのう。とても血の繋がりがあるわしの孫とは思えんわ」
そう言うジョセフは、悪ノリが激しいアメリカンムードのタイプである。
「あの由来様のファンタスティックな演奏を断るなんざ、理解できないねえ〜。女の子の親切心を無碍にするなんざ、紳士のすることじゃあねえなあ。なあ?由来さんよう?」
続くポルナレフも女好きのお調子者ムードである。
「すまんな由来。アイツはいつも以上に口数が少ない。多分、機嫌が悪いんじゃあないか?」
謝ってきたジョセフに対して、由来は首を振って制した。
「よく考えたらあの時は、周りの空気もあって、こちらが勝手に口約束したようなものです。気にしてませんよ」
『何かの縁かもしれないし、ジャズもいいと思うよ僕は。僕もいつか機会があったら聴いてみたいな。な、承太郎』
『フン』
『…そうですね。時間があったら……』
そうだ。承太郎自身がまた聴きたいと言ったわけでも、約束したわけでもない。
花京院くんや周りが私の演奏を気に入ってくれたムードの中で、自然と会話がそうなっただけ。
本人が望んでないのであれば、無理強いなどしないよ。
でも…
(らしくないな。何の理由も言わずに、ただ嫌と言って立ち去るなんて……)
旅で疲れて休みたいから部屋に戻ったのか。もしそうなら、そう言えばいいと思うが。
それに気のせいかな。承太郎がロビーから離れる直前、目が合った。
偶発的というよりかは、意図的に目を合わせてきたようで。何かの合図のような……
(うーん、単なる私の自意識過剰か……)
そうやって思案しつつ、ピアノの演奏をお開きとなった。
由来は自分の部屋がある4階へ登った。
階段側には手すりがないため、壁伝いで進む。
(やれやれ。まだ片目の距離感を掴めないか。先が思いやられる)
視界が定まらないのは、戦いにおいてかなり不利だ。
特に私の"白の陰影"は無差別に周りを凍らせてしまうから、何としても、視界だけは矯正し……
ズキンッ!!
「!?」
焼き切れるような痛みが頭の中を駆け巡り、膝がガクンと落ちる。
グニィ〜
左目の視界が曲線を描くように歪んだ。
(あ…れ………)
体が硬直したように動かなくなり、由来は意識を手放した。