第14章 告白と小さなお別れ
演奏が終わると、野次馬はどんどん小さくなっていき、あまり騒がしくなくなっていった。
(あまりピアノは無闇に弾かない方がいいかもな。さっきみたいによく分からないトラブルあったり、何より目立ってしまうのはこちらの本意ではないからな)
周りが見えなくなり、単独行動をしてしまう。
由来自身も自覚している悪い癖だ。
そう思いながら鍵盤蓋を下ろそうとしたら、花京院が思い出した。
「由来。そういえば君、承太郎と約束したね。演奏するって」
「!」
「おお、そうじゃったのう。インドでそんな話もしたな?承太郎」
ジョセフは承太郎に確認するように聞いた。承太郎は相変わらず無口で塩対応だ。
「せっかくじゃ。由来。孫に1曲上等なものをお願いできんかのう?」
由来は断る理由もなく、二つ返事で了承した。
「そうですね。約束ですから。今の内に弾いておいた方がいいかもしれませんね」
再び鍵盤蓋を開けた。
「おお〜、また聞けるのか。いいねえ〜。今度はどんなジャンルを弾くんだ?」
ポルナレフは承太郎よりも明らかに嬉しそうで、期待を込めていた。
「ジャズですよ。クラシックよりも自由な曲調で、型にはまらないところは、私はまあ好きです」
これから私たちは、パキスタンに入っていく。しばらくは治安が良くない地域を進むだろう。
これほど上等なピアノを備えているホテルは、今後あるとは限らない。
それに、
・・・・・・・・・・・・・・
今後どうなるか分からないなら、今の内に……
「……いや、俺はいい」
!!
予想外な返答をされ、ジョセフは詰め寄った。
「何を言う承太郎?お前は音楽は嫌いじゃないじゃろう?インドの時は、由来の演奏を誰よりも熱心に聞いていたじゃあないか?」
世話を焼かれるのが不服なのか。それともそう言う気分じゃないのか。もしくは、恥ずかしがっているのか?
いずれにせよ、承太郎の拒絶により、場の空気が少し冷めてしまった。
「俺は部屋に戻る」
承太郎はそれだけ言い残し、その場を後にしてしまった。
その際、由来は承太郎と目が合った。
「!」