第14章 告白と小さなお別れ
「いいじゃないですかい。異国の地から来た、謎の片目のピアニスト。中々に良い記事が書けそうじゃありやせんか?」
カメラマンは悪びれもせず、ピアノの世界に没頭している由来を撮影するのに没頭する。
商売道具であるカメラを両手で握りしめ、仕事人オーラがにじみでている。
「いや、そもそも彼女は学生で、まだ未成年じゃ。それに、我々は無闇にカメラで撮られたり、ましてはそれを新聞やテレビなどのメディアに写って、顔を知られる訳にはいかんのじゃよ」
ジョセフは困り顔を浮かべながら、男の持っているカメラを指さして言う。
しかし男は、シャッターを切るのを止めない。
すると、男のカメラが取り上げられた。
いつの間にか背後にいた承太郎が、カメラを片手に、圧倒的な存在感を放っていた。
「承太郎!」
「な、何するんだアンタッ!」
「てめェこそ、何やってんだ?人の連れをパシャパシャ盗撮しやがって」
カメラマンの方は、承太郎の貫禄や凄まじい圧倒的なオーラを目の前にして、萎縮していった。
「わ、分かったよォ〜。もうあの子は撮らないからさ。おニューのカメラを壊すのだけは勘弁してくれ」
カメラマンはカメラを返してもらうと、承太郎達の前で着実に、カメラの記録を消していった。
「あ〜あ、やっと会えたのに。今度こそは彼女をカメラに残したかったぜ」
カメラマンはそう口から溢しながら、消去ボタンを押し続ける。
「ん?君、その言い方、由……彼女に会ったことがあるという言い方だな」
不審に思ったジョセフが聞くと、カメラマンは最後の写真の記録を消去し終わり、ジョセフの方を見上げた。
「ええ。2年くらい前ですかね。このホテルで見かけたんですよ。東洋人なんて珍しいからすぐにピンときやした」
『!』
ジョセフ、花京院、承太郎はこの時、同じことを思った。
由来は、この場所に来たことがあるのか?