第14章 告白と小さなお別れ
「クッシュン」
「どうした?風邪かい?」
「いや、学ランがねぇと落ち着かなくてな」
承太郎は、花京院と一緒にいた。
自由時間だが特に何もすることはなく、お互い部屋でのんびりしていた。
承太郎はベッドで足を組んで、頭の後ろで両手も組んでいた。
ノースリーブだけで、長袖を着ていなく慣れていなかった。
「ああ…!今日の敵に燃やされたやつか。もう仕立て屋には行ったのかい?」
花京院は窓際に座って小説を広げたまま、ベッドに寝転がっている承太郎に話しかけた。
「ああ。明日までにやってほしいと頼んだら、案の定断られたが、じじいが相場の10倍の金を見せびらかせて、快く引き受けてくれたぜ」
(ジョースターさん、お金で解決したのか……)
このパキスタン手前の異国の地で、「日本製の学ランを、たった1日で仕立ててくれ」と頼むのは無理難題だ。
ジョセフはそれを見越して、かわいい孫のためにジョースター不動産の莫大な富の一部を使ったのだった。
(そこらへんは、ジョースターさんと承太郎は、似てるな。自分の思い通りにさせるために、時には荒っぽいこともやるってとこが)
花京院は「あ、アハハ」と苦笑いをして、小説のページをめくる。
「そういえば、由来も服を買いに同じ店に行ったか、行くらしいけど、鉢合わせとかしたのかい?」
「………いや」
物事をはっきりと言う承太郎の割りに、何か含んでいるような返答だ。
いつものようなドンと構える覇気のようなものがなく、何かあったに違いない。
「どうした?彼女と何かあったのかい?」
「別に何もねえ」
承太郎は素っ気なく答え、そこで会話は終了して15分以上も無言を貫いた。
学帽を深く被ったまま、天井の方を見上げ、上の空のようだ。
(き、気になる…!
・・・・・・・・・・・・・
承太郎がなぜ元気がないのか…!)
部屋に入る前、廊下でポルナレフは言っていた。「由来は承太郎を避けているみたいだ」と。
もし“それ”が本当で、承太郎も自分が避けられていることに気付いて、落ち込んでいるのなら……
「承太郎は彼女のこと、好きなのかな」
花京院はつい、口に出してしまった。