第14章 告白と小さなお別れ
「おー!由来とアンじゃねーか!外に行ってたたのかッ!」
気が付いたら、私たちはホテルのロビーに着いていた。
少し離れたところから声をかけてきたのは、ポルナレフさんだった。
「噂をすればちょうど来たじゃあねえか!」
「??」
何を噂されてたのか全く分からず、アンと顔を見合わせた。
「いいから!ちょっとこっち来いよ!おめーの好きなもんがあるからよ!」
私の好きなもの?
“承太郎”
ハッ!
私は思わず自分の右頬をグーパンチで殴った。
「ちょっ!おいおいおい。何やってんだよ?」
ポルナレフが駆けより、アンは由来の腕を引き留めた。
「何してるのよ?女の子の顔なのに」
「いや、変な妄想をしてしまった自分に制裁を……」
「由来って、けっこう変わってるところがあるのね…」
アンはアハハハハと苦笑いを浮かべる。
「そんなことより早く来いよ。俺、
・・・・・・・・・・・・
見たことなかったからさぁ!!」
見たこと?
由来は催促されるがままに、アンと共に奥の方へ進む。
ロビーの奥の方には、ダイニングルームらしき広い空間があり、さらにその奥の方に目を凝らすと、グランドピアノが置かれていた。
(あ~、なるほど)
全ての話に合点がいった。
好きなもの。ポルナレフさんだけの前では、まだ披露したことがなかったもの。
最後に演奏したのは、インドに上陸してすぐに入ったレストランの中だ。
あの時はポルナレフはお手洗いに行っていたから、丁度いなかったんだと、由来は改めて思い返した。
「え!由来、ピアノ弾けるの?」
「う、うん。そういえば、アナタも知らなかったか」
「見たい見たい!どんな曲弾くの?得意な曲とかあるの…?」
アンは意外にも興味津々である。
「……カノンかな。知ってる?」
「いや、知らないけど見てみたいな」
どうやらアンは曲を聞きたいのではなく、由来が弾くところを見たいらしい。
聴覚よりも視覚か。
「あ、でも右目が……」
「いや、物心付いたときから弾いているから、お箸を持つよりもうまくできるよ」