第14章 告白と小さなお別れ
驚いて左目の下に触れたが、涙など流れていない。
「……泣いてないよ?」
「あー、背中が何だか、泣いているように見えたから」
「……」
「ねえ、よかったら一緒に町に出てみない?まだ日が落ちるで時間あるし」
「え?」
由来は瞳孔を開いて、自分のことを指さした。
「いや、アンは承太郎と遊びに行きたいんじゃあない?今の私は片目だし、あまり遠くに行けないかもよ」
するとアンは由来の腕に抱きついた。
「いいんだよお~。よく考えたらあたし由来とお出かけしたことないじゃん」
アンは1週間ほど前、シンガポールのつかの間の暇で、承太郎と花京院(偽)と観光を楽しんだ。
ココナッツジュースを飲んだり、ケーブルカー乗り場へ行ったりもした。
しかしそこで承太郎は襲撃に遭い、散々な一日になってしまったが。
由来はそこらへんのことを、承太郎からすでに聞いていて知っていた。
(あの時は、アンに直接被害が及ばなかったからよかったが。でも、片目のハンデを持ってる私が、1人でアンを守りきる自信が……あまりないな)
色々と考え込んだら、アンは由来に対し、「色々考えるのは禁止!」と声を上げた。
「それに…由来、何だか元気がなさそうだし、少し疲れてるんじゃない?少しでもリフレッシュした方がいいわ!」
「……そう。そうだね」
由来は不器用な笑顔を作った。
(ジョースターさんに事情を話しておいて、遠くに行かなければ問題ないか。なるべく人目につくところを散策すればいいか)
それに、アンの言うことにも一理あった。
気持ちが落ち込めば、精神から肉体にも悪影響が及び、スタンド能力にも支障をきたすかもしれない。
今後はより強大なスタンド使いに会うだろうから、その時のために、暇の過ごし方も大事になってくるだろう。
気分転換して前向きな気持ちになれば、物事はうまくいきやすい。確かにその通りだ。
年下の女の子から教訓を得るとは。自分はまだまだだなと、由来は思った。