第1章 序章
(い、いつの間に…!)
「見えたか?気づいたか?これが悪霊だ。おれに近づくな…残り少ない寿命が縮むだけだぜ」
戦いの経験がある自分の目をいきなり欺くほどの速さを見せつけられた。
(なんてこった。たまげたわい!)
だが、ワシはその悪霊の正体を知っている!
承太郎の言う悪霊とはそうであってそうでないものだ。
しかし今の態度、口で言っても素直に聞くわけない
・・・
ならこちらも同じ物を見せて、自身の体で体験すれば
ジョセフは友人のアヴドゥルに、孫を牢屋から出せと命じた。
「少々手荒くなりますが…」
アヴドゥルはゆっくり腕を動かし、妙なポーズをとると気のせいか暑くなってきた。
手を振りかざした瞬間、炎とともに人の体に頭は鳥の霊が現れた。
「これは…!」
承太郎だけでなく外にいるホリィも謎の光景に目を奪われた。
それは実体ではなく、人とは程遠い形をした像。
「アヴドゥルが持つ悪霊。悪霊の名は、魔術師の赤(マジシャンズレッド)!」
腕や全身に炎を纏った悪霊が襲ってきて、伸縮自在な灼熱の業火が、承太郎の体の自由を奪う。
承太郎は思わず自身の悪霊を出して、炎の縛りを打ち消した。
その悪霊には、とてつもないパワーを秘めたような迫力があり、人型に近かった。
「おー!出おった!ついに姿を表したか!それもこんなにはっきり形が見えるとは!相当のパワー!!」
それが鳥の姿の悪霊の首を締めると、アヴドゥルの首元にも掴まれたような跡がくっきり映る。
悪霊同士の攻防戦。普通の人間には入ることのできない領域。
ジョセフはようやく悪霊の正体を教えた。
「悪霊と思っていたのは、お前の生命エネルギーが作り出すパワーある像(ビジョン)なのじゃ!そばに現れ立つというところから、そのビジョンを名付けて『幽波紋(スタンド)』!」
承太郎はアヴドゥルのしつこい攻撃に、ついに腹を立て、檻をぶち破って鉄パイプを振りかざした。しかし、
アヴドゥルは防御するどころか、背を向けてスタンドを引っ込めた。
「きさま、なぜ急にうしろを見せる?こっちを向けいッ!」
「ジョースターさん…みての通り、彼を牢屋から出しました…が」
そして今に至る…