第1章 序章
最近自分の家が騒がしく、彼は落ち着かない様子でいた。
屋敷はいつもと違い、2人の客人が滞在し賑わっていたから。
1人は彼の母親の父、つまり祖父あたる人物。ジョセフ・ジョースター。
そしてもう1人は、その友人であるエジプト人、モハメド・アヴドゥル。
母親が来客に喜んでいる中、彼はやれやれと全く無関心でスルーでいた。
しかしそんな態度をとっても、まさか自分の悪霊騒ぎがこんなことになるなど、思ってもみなかっただろう…
全ての発端は、つい数日に遡る…
承太郎は“あること”がきっかけで、牢屋に自ら閉じこもった。
その“あること”とは、自分が以前とは違うことに気付いてしまった。
いや、自分自身ではなく
・・・
何かが自分の背後に潜んでいた。
何人か病院送りにしたほどの喧嘩を起こしたことで、警察に身柄を確保され幽閉されたことを機に、彼はこの謎の現象の原因が分かるまで、牢屋に身を置くことにした。
釈放を許されても、母親のホリィが来たとしても、頑なに出ようとはしなかった。
「俺には悪霊が取り憑いている。ソイツは俺に何をさせるか分からねえ」
困ったホリィは父親のジョセフ・ジョースターに助けを求めた。
60代にも関わらず、承太郎に劣らないほどの大きな体格にダンディーな身なりが特徴である。
愛する一人娘と孫のために、わざわざニューヨークから飛行機で24時間以内にやってきた。
そしてついにむかえた、牢獄の柵を境に孫と祖父の奇妙な対面。
ガシャーン
ゴゴゴゴゴ
「出ろ!わしと帰るぞ」
「消えな。およびじゃあないぜ…おれの力になるだと?」
説得を試みるが、相変わらず承太郎は態度を変えない。
「ニューヨークから来てくれて悪いが、おじいちゃんは俺の力にはなれねえ」
逆に目で追いつかなかったくらいの速さで、祖父の左手の義手の小指を抜き取った。