第14章 告白と小さなお別れ
由来は顎に手を添えた。
(確かに小さな町なら、地図を見る必要はないか。ぶらぶら散歩するついでに、探しに……)
ポルナレフは指を鳴らした。
「あ。そうか!分かった。長旅でそろそろ新しい服でも欲しいから、ブティックに行きたいんだろッ!」
前言撤回。ポルナレフさんは違う意味での“女の勘”があるんだな。
由来は黙って頷く。
「お?当たりか?結構、俺、勘がいいだろ?」
由来は黙って頷いた。
「何かしゃべろよ」
(これからのルートだと、パキスタンを超えれば砂漠に入る。人里から離れれば、物資も補給しにくいから、この街で買っておくべきだ…)
それに、さっきの敵との戦いで、少し裾が焦げてしまったからな。新調したい。
すると今度は花京院が、思い出したように口を開いた。
「あ、なら、承太郎と行けばいいんじゃあないか?確か、学ランを仕立てに行くらしいし」
「え?」
驚いてつい、声が出てしまった。
「で、でも、承太郎は仕立屋さんに行くんでしょう?普通の服は売ってないんじゃ…」
「いや、僕もさっき地図を見たんだが、ここは小さな町だから、服を売っている店はその仕立屋しかないらしい」
「……そうか。分かった」
由来は自分に与えられたホテルの部屋の鍵を手に、アンに「おいで」と声をかけて、一緒に部屋へ向かった。
「……なあ、由来…承太郎のこと、避けてねーか?」
「ん?」
ポルナレフは承太郎が近くにいないことを確認して、花京院にひそひそと聞いてきた。
「何でそう思うんだ?」
「いや~気のせいかもしれないが、このホテル向かう時、ずっと由来浮かばれない顔してて、承太郎のことを見てたんだよ。何つーか…警戒しているというか?」
「……」
「まさか承太郎、由来に失礼なことでもしたんじゃあねえよな。アイツ、俺とは違って女心に無頓着っぽいしな」
(そこだけは賛同できるな)
花京院も、承太郎の女性への無頓着さを知っていた。
何せ、登下校はいつも恋に踊る女子高生に囲まれながらも、なるべく無視を決め込んでいるのだから。