第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
それからDIO様は「このことは他言するな」と釘を差した。
そして3ヶ月前、好都合に日本在籍のスタンド使いである花京院がエジプトに来た。
奴を由来の代わりに承太郎を始末するよう命令した。たが、その花京院も今や、ジョースターに寝返った。
そしてまさか、DIO様は未だにあの娘を寵愛して……
オロロ~ン!
エンヤ婆は暗闇の中1人で泣き出した。
(DIO様は未だにあの小娘を連れ戻す気があるかもしれんが、わしは違う…!)
ガバッと立ち上がり、駆け出した。
「今度はこのエンヤ婆がきさまらの相手じゃッ!わし自身のスタンド!「正義(ジャスティス)」のカードがのォォォォォ~っ!!」
エンヤ婆の姿は闇の中へと消えていった。
その一部始終を、DIOはハーミットパープルの能力で水晶に写してこっそりと見ていた。
(エンヤ婆。かなり頭をやられた?というところか?全ては、息子への愛と失った悲しみが原因か)
愛……か。フッ。
DIOは自分の部屋へ戻り、玉座に座り、そばのテーブルに置かれているワインをグラスに注いだ。
香りを楽しんだ後、ゆっくりと口を付けて口の中に広がる奥深い味を楽しむ。
ろうそくの光を灯し、いつものように読書を嗜む。
そんな自分の時間に浸っている時、いつも自然と疑問がわき起こる。
今度は、“愛”についてだ。
(ジョースターの奴らも、母親や娘への愛のためにこのDIOに挑戦しようとしている。そして面白いのが、あのエンヤ婆でさえ、家族への愛で狂っているというところだ)
どんなに人間とは思えない悪魔の所行を重ねてきたとしても、子を思う親心は持っているとはな。
そしてこのDIOといえば、父親への愛はさらさらなかったが、母への愛はあった。
まあ、父親の方は母をうまく利用して、酒や金に溺れて狡猾に生きていた。
その点では、目を見張るものがあったことは認めよう。
人は、欲するものを手にするために生きるのだと、エンヤ婆は言った。
そして俺は、恐怖を克服するために生きるのだと、言った。
だが今の俺は、違う答えも見いだした。
人は“愛”のために生きている、とな。
DIOは口角を上げた。
(なら由来。お前は今、誰への愛のために、戦っているのだ?)