第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「いい加減しろよ!てめーにゃ危ねえって何度言えば分かるんだ!」
「!」
ポルナレフはきつめに言い、アンはしょんぼりした。
「ったく。てめーは由来を見習って、おしとやかにしろよ。将来、立派なレディにゃなれねーぜ」
「いや、私も昔はやんちゃしてましたよ。小学生の時、同級生の男子を殴ってしまって、警察沙汰になってしまいました」
『!!!』
嘘だろ由来。
全員がそう思った。
「え、それは…本当かい?」
「私は嘘が苦手ですから」
花京院も驚いた。
喧嘩で警察沙汰といったら、承太郎の方がイメージ通りでもあるから、よりによって大人しい彼女にそんな過去があるなど知らなかった。
「だからアンがこれからどうなるかは、彼女次第じゃあないですかね」
「そ、そうか……?」
ポルナレフは何となく納得した。
由来は、自分から彼女に「帰れ」と話を持ち出したこときっかけで、ポルナレフが彼女をさらに説教することになってしまったことを、気にかけていた。
良心の呵責を覚えていたので、今度は彼女を擁護したのだった。
(相変わらず、見えないところでも優しいのう。由来は……)
ジョセフは見えないところで黙って彼女の良いところを見ていた。
「もう冷やし終わった。返していいか?」
「うん」
承太郎はアイシング用の氷を彼女に渡した。
その時、花京院はふと思ったことを口走る。
「ああ、そういえば君から小さい頃の話をするなんて初めてかもしれないですね。以前の方が、由来は口を開くことは限りなくゼロで……」
グシャアッ!
「!!」
由来は承太郎から受け取った氷を握りつぶして、手から血が出てきた。
「由来…?!大丈夫か?」
ジョセフは彼女の手を取った。血はそれほど出てないが、それよりも氷を握りつぶすほどの腕力に驚いていた。
「ど、どうしたんだ?」
花京院は助手席から後部座席に、上半身を少し乗り出して由来の顔色を伺った。
彼女の様子が変だ。
「今、何て呼んだの…?」
静かに花京院にそう聞いた。
(ん?)
承太郎は“その言葉”を聞き逃さなかった。