第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
由来は頭を押さえたまま、呆然と立ち尽くす。
(連れてってくれと懇願するアンとそれを無言で制する承太郎の姿を目にして、記憶の蓋がズレたの?)
……確かに、あの時私は14歳、アンとそんな年が変わらないくらいだったけど…
ズキッ!!
「うっ…!!」
さらに強い激痛が脳内を走り回った。
「うっし。そろそろ行くか…!って、由来?早く乗れよ」
由来だけなかなか車に乗らず、ポルナレフは不審に思った。
ズキ!
由来の頭の中に知らない声が響いた。
『またエジプトの遺跡調査団の輩か。再び場所を変える必要がありそうだな……』
え…?
『私の最強のスタンドパワーとお前の最強の盾、どちらが矛盾しているか、試してみる価値はありそうだな……』
今の声、誰……?男の人?
するとまた別の声が頭の中をよぎる。今度は知らない女の人の声だった。
『相変わらず、スタンドも性格も頑固な奴だな。まあ、そこがアンタの良いとこだがよォ』
声だけが脳内で再生され、景色は何も見えない。
『頼りにしてるぜ!相棒!』
「おい!!由来!」
「!」
由来はハッとなり、目の前にポルナレフがこちらを見下ろしていた。
「どうしたんだよ?ずーっとボーッとして、らしくねえぞ?」
「……そうですね。確かに私らしくない。すみません。早く先を急ぎましょう」
笑顔を取り繕って、急いでオンボロ車の後部座席に乗った。
「じゃ、出発するぜ」
ポルナレフはエンジンをかけて、アクセルを踏んだ。
しかし予想通り、不安定でゆらゆら揺れて、船酔いを誘いそうなくらいひどかった。
「かなり揺れるな~、由来。気分は悪くねーか………。?」
ポルナレフはまた声をかけたが、由来は終始下を見て、ずっと考え込んでいた。
「?」
彼女の右隣に座っていた承太郎も気になった。
(さっき、誰かの声が頭の中をよぎった。あれは、記憶?昔を思い出していたような感覚だ)
でも、おかしい。これだけは言える。これは…
・・・・・・・・・
私の記憶じゃあない。