第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
敵は残った力で、ゴキブリのように地面を這いつくばり逃げようとするが、ポルナレフが踏みつけて阻止した。
「おい!逃げるんじゃあ…ねーっ」
「ギニャアアアアッ。こっ、殺さないでッ!金でやとわれただけなんですーっ」
さっきの傲慢な態度とは別人のように弱気で情けなき姿だ。
ギャハハハハ!!
その無様な姿を前に、呆れを通り越して、ジョースター一行は大笑いした。
あのクールな承太郎でさえも、見たことのないほど満面の笑みを浮かべていた。
しかし由来だけは相変わらず、あまり笑っていなかった。
せっかく防御の能力を取り戻したばかりで、力を発揮できると思っていたのに、初っ端から防がれたことに、落ち込んでいた。
しかもこんな情けない敵に食わされた。先が思いやられた。
もっとも、彼女はあまり笑う体質でないことも事実だ。
ホワ ホワワ~ン
敵のスタンド『“運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)』が姿を変えた。
スタープラチナによって、廃車寸前のボコボコ車から、さらにオンボロの中古車に変わった。
いや、戻ったというべきか。シンガポール沖で会った『“力”(ストレングス)』と同じだ。
「オ~ゴーッド。そしてその体格どおり「スタンド」も消えてみれば……こんなちっちゃい車をカムフラージュしていたとはな。たとえるなら、毛をむしりとられた綿羊というところか。なさけないのォ~~…」
ジョセフはそう言って、皆の笑いを誘った。
どわはははは
笑い終えたら、再起不能になった敵を岩に縛り付けた。
「エウフ(ヘルプ)!エルファー(ヘルプ)!」
口元も布で縛ったから、満足に喋れない。
ついでに立て看板もつけて、こう綴った。
『わたしは修行僧です。神聖なる“カトゥー”(荒行)をじゃまして、ほどいたりしないでください。』
西インドでは、厳しい修行をすることで、悟りを開く行いをすることがある。
タイでは、仕事の有給を取って3ヶ月間、プチ出家という名目で、髪と眉を剃り、人と一切会話をせず、執着心を持たないことをする。
地域によっては少し違うが、修行とは自分の心や体を清める行為であって、それを妨害することは断じて許されることではないのは共通である。