第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「ああッ!承太郎が炎につつまれたーッ!」
さっきまで由来の寒い世界が広がっていたのに、敵の灼熱の世界へと変わってしまった。
図体の大きい承太郎は足先から帽子の頂まで炎に包まれてしまった。
ジョセフたちは何とか助けに行きたいものの、文字通り火の粉が降りかかりそうで、近付きたくても近付けない。
ポルナレフは思った。
(クソッ!俺のチャリオッツの剣で炎を切断したいところだが、大きさが桁違いだ!)
ポルナレフのスタンド『“銀の戦車”(シルバー・チャリオッツ)』の剣術は、炎をも切断できる優れものだ。
しかし、剣で切断できるほど距離を詰めたら、業火がこちらに降りかかる。そうなっては本末転倒だ。
(や、やべーぞ!炎に包まれる苦しさは、俺が一番よ~く知っている…!このままじゃ承太郎がローストされちまう…!)
1週間以上前、香港でアヴドゥルと対戦した時のことを思い出していた。
あの時は自惚れていたが、アヴドゥルのスタンド『“魔術師の赤”(マジシャンズ・レッド)』の能力の炎を切断して無効化できることから、勝つ自身がたっぷりあった。
しかし、アヴドゥルの巧みな戦術で足元をすくわれ、灼熱の炎を浴びせられた。
炎を甘く見る恐ろしさをその身で体験して、誰よりも知っていた。
(あの時はあの後、由来がすぐ氷で冷やしてくれたから、大事には至らなかったが……)
「あ!」
そ、そうだ!!ここには、炎を操れるアヴドゥルはいねーが、雪を作れる由来がいるんじゃあねえか…!!
「由来!お前の能力で承太郎の火を消すんだ!このままじゃ……!」
ポルナレフは言ったが、なぜか由来は全く動こうとしなかった。
いや、それより変だ。
いつも誰よりも早く行動できて、仲間のためならすぐに助けにいくはずの由来が、承太郎の焼かれる姿を見ているだけで立ち尽くしていた。
「おい!由来!!」