第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「なぜなら!この「“運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)」で、ひき肉にしてこの岩場にぶちまけるからだァ!」
傾斜90度ほどの断崖絶壁でも登って、頂上にいる我々に近付いてくる。
あの承太郎でも、敵のスタンドの汎用性の高さにたまげて、冷や汗をかいていた。
「オ~ノォ~!」
「のぼってくるぞ」
・・・・・・・
「なんでもありか~っ。この車ァ!」
(ひき肉か。あ、そういえば、家の冷蔵庫に作り置きしておいたハンバーグ…もう腐っちゃったかな……)
由来だけ着眼点がずれていた。
ホリィが急病を煩って緊急を要したため、日本を発つ際は自分の家に戻る余裕も無かった。
だから、自分の家においてある食材の賞味期限の心配などしていられなかった。
そして、日本のご飯が少し恋しくもなっていた。意外と子供っぽい面もある。
しかし、こんな状況で考えることではないと、少し後ろめたくなり、首をブンブン横に振る。
前に出て再び守りの能力を使おうとするが、承太郎が腕を出して制した。
「守備も結構だが、それだけでは敵は倒せねえ。今度は、こちらから攻める番だぜ」
「……一理あるな」
由来は頷いて、素直に従った。
「みんな、さがっていろ。やつはここを登り上がる時…車の
・・
ハラをみせる。そこでひとつ、やつとパワー比べをしてやるぜ」
「なるほど。ハラをみせたときなら、攻撃できるかもしれん」
そう言った花京院は、攻撃よりも遠距離の索敵などサポートに特化しており、攻撃力は承太郎のスタープラチナの方が上だ。
ここはひとつ、この中で攻めの能力が一番の彼にかけようと、皆の意見が無言で一致した。
そして承太郎はさらに一言付け加えた。それも、由来に向けてだ。
「それと、おめーは能力を使うな。何があっても、決して冷やしたりするなよ」
「え…?」
「冷やすって何を?」と聞きたかったが、敵の車の振動音が強くなり、とうとう決着の時が来てしまった。
ゴゴゴゴゴ
承太郎の予想通り、敵の車は崖から身を乗り出し、ボディの裏側ががら空きになった。