第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
由来は承太郎の肩の傷ばかりに目を取られ、自分の脚からの出血に気付かなかった。
サポーターとして巻いている白い包帯が、赤く滲んでいた。
「“てめー”(自分)の心配をもっとしろ。心配かける側の身にもなれ」
「……ごめん」
承太郎は彼女を抱えながら、ボルダリングのようにひょひょいっと登る。
「てめーばかりおいしいとこ持ってったら、俺のカッコがつかなくなるじゃあねえか」
「え…?」
承太郎は敵の不意打ちを食らい、少々不機嫌に鳴っていた。
由来ばかりが敵の足止めのために力を振るっているため、自分もスタンドで敵を圧倒したくてうずうずしていた。
戦いを楽しむわけではないが、このままやられたままでは自身のプライドが許さない。
負けず嫌いのジョースター血が騒いでいたというところだ。
そして由来は、自分の怪我を省みずに周りを助けようとすることがよくある。
よく言えば、それほど人のために尽くせるということだ。
承太郎は、彼女のその優しさを十分分かっていた。
「まあ……おめーのそこんとこは、嫌いじゃあねえが」
「!!」
由来は自分の顔が熱くなるのを感じた。
承太郎は頂上につき、由来をゆっくり下ろした。
怪我している方の脚を気遣うために、逆の脚の方から着地するように彼女をゆっくりと立たせた。
「由来さん大丈夫?!って、由来さん、顔赤くない…?」
アンに指摘されて、ドクンと胸が高鳴った。
「い、いや……それより!下の敵は…!?」
自分の能力で無理やり顔の火照りを冷まして、下を確認した。
下の敵はエンジン音を高鳴らせて、こちらを見上げている。
「フヒャホハッ!フン!のぼるがいいさァ!おまえらには文字どおり、もう「道」はない。逃げ「道」も、助かる「道」も、エジプトへの「道」も、輝ける未来への「道」もない」
ホウィール・オブ・フォーチュンの車のタイヤから、再びスパイクを生えて、崖を登り始めた。