第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
(承太郎…!)
てっきり、もう上の方に行ってると思ってたのに。他の皆はもうすでに上にいる。
(まさか、私のためにペースを落としていたの?)
しかし、承太郎は敵の攻撃を受けて、肩のあたりを怪我している。
その状態で壁を登っているどころか、私を支えるなんて無茶だ。現に今も出血し……
ヒョイ
「!」
「余計なこと考えてんじゃーねえよ」
・・・え?
スタープラチナの素早さで、いつの間にか肩に担がれていた。
承太郎は私の腰のあたりを抱えて、私は承太郎の背中の方に顔を向いている体勢だった。
(い、い、いいいつの間に…!)
下の方を向くと、敵が車の窓からこちらを見上げていた。
顔を上げたら、岩壁の凹凸を掴む方の承太郎の肩から、出血が酷くなっていることに気付く。
「ちょっ、血が出ている…!」
「誰だって血は通っているぜ。別に珍しくもなんともねえ」
「そういう意味じゃあない!いつからボケのキャラに走っているんだアンタは…!私がインドで落ちた時も無茶して、二の舞に……!」
承太郎はため息をこぼし、由来を腕の上に座らせるようにして乗せて、自分の目の前に来るようにして向き合った。
「やかましいぜ。黙ってねーとその口塞ぐぞ」
「!」
担がれるほど顔が近距離で、その迫力と貫禄を目前にして、思わず目を反らした。
(すみません。近いです……)
これほどに密着したことがなく、お互いの心臓の鼓動が分かりそうになるくらいだ。
ちなみに、由来は女子校に通っているため、ここ数年は男性相手に不慣れである設定だ。
由来は照れ隠しのために、白いパーカーのフードを被った。
「承太郎!由来!!大丈夫かー…!!」
すでに崖の上に到達していたジョセフたちがこちらを見下ろしていた。
「一気に登る。落ちねえよう俺の首に腕回せ」
「……」
担ぎ上げられた状況では、下ろすこともできないので、由来はしぶしぶ承太郎の言うとおりにした。
(肩に担がれるよりも顔と顔の距離が近い。目が合わないよう俯いておこう)
「お前、まだ脚治ってねえだろ?」
「!」