第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
由来は誉められることを、あまり好かない。
誉められるということは、愛情表現の一つでもあるからだ。
認めてもらうことを本当は長年望んでいたと、意識し始めた彼女であったが、やはりこそばゆかった。
(それより、何とか私の盾なら車の猛攻を止められることが証明されたらしいな)
ドォン!ドォン!
馬力のある敵の車が氷の盾に何度も突進しているが、ひび一つ入ってない。
回り込んだとしても、その隙を狙って攻撃もできる。
こちらには攻撃型スペシャリストのスタンド使いがわんさかいるのだから。
車の中の敵は地団駄を踏むかのように、悔しそうに窓の縁をドンドン叩いていた。
「す、すごい。由来。これが君の、防御型スタンドの能力…」
花京院は感心の言葉を漏らした。
(どれほど連発して使えるかは知らないが、ジョースターさんが作戦を考える時間くらいは……)
「大丈夫か。承太郎。何をやられたんじゃ?」
ジョセフは孫の承太郎の傷の具合を見た。
「いや、全然見えなかったぜ。傷は深くねえが、えぐられている。何か飛ばしてきたような攻撃だったが、実際傷口には、なにも突き刺さってねえぜ」
承太郎は祖父のジョセフに傷口を見せて、攻撃の破片の証拠がないことを教えた。
(あ、そうか……)
そうだよね。承太郎にはちゃんと、血のつながりのある家族がいるんだ。
私よりも信頼できる人物がそばにいる。心配するべき人がそばにいる。私が一番よく知っていたことじゃあないか。
偽りだらけの私に見てもらうより……
私なんかが、踏み入れてはならない領域にいる。
認められたからって、何浮かれているんだ私。
目の前が暗くなる。
『あんたなんか……生まなきゃよかったのよ…』
聞いたこともない声に、見たこともない女の人の顔。
由来の想像の中にいる母親は、いつも彼女を拒んでいた。
そして、ある人物の言葉も蘇る。
『人に尽くせ。そうすれば自然と、誰かに愛される人間になれるはずだ』