第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
由来の氷の盾の表面は、雪の結晶のような形をしている。
透き通る色と不純物のない光沢さ。とても美しい。
しかし、その純粋さの影に潜む、兎神由来という謎の女の素性。
彼女の能力を再び目の当たりにして、承太郎の胸の奥から再び、ふつふつと湧き出た。
疑いだ。
(インドで会った敵は言ってたな。
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「あのDIOでさえも、
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破壊することができなかった盾」だと)
だがそれは、由来への不信感を募らせるための、敵のでっち上げだと、じじい含めた俺たちは結論づけた、が……
(由来がDIOの仲間じゃあねェとしても、本当は
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DIOと面識があるんじゃあねえのか?)
肩から滴りでる血が学ランの袖を濡らす。
(何か事情があって、やはり嘘を付いているのか?それか、記憶喪失、とかな……)
「承太郎。けが、大丈夫?少し見せて」
そんな疑惑の念とは裏腹に、事の本人が心配してやってきた。
「……」
「?。ど、どうしたの…?」
ずっと黙り込んでこちらを見下ろす承太郎に、由来は首を傾げて聞いた。
傷口を見せてもらうために屈んでもらおうとしたが、ずっと立ち尽くしている。
何かボーッとしている感じで、いつもしゃんとしている承太郎らしくない。
(……いや、
・・
今はよしとくぜ)
承太郎はけがを見せずに、顔を背けた。
一方で、ホウィール・オブ・フォーチュンのスタンド使いは、車の窓の縁を叩いて悔しがっていた。
「チッ!もう少しで承太郎をひき殺せたっつーのによォ~?危ねえじゃあねえか?!」
(それお前が言うのか?危険運転手)
由来は氷の盾を保ったまま、ジョセフたちと共に後ろへ下がる。
「由来…!これが、承太郎が言っていた“最強の盾”というやつか…!」
「その呼び方は訂正してください。誉めたところで、私のスタンドパワーがアップするわけじゃあないですから」
そういえば、氷の盾の能力を見せるのは、承太郎以外の全員には初めてであった。