第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「じょっ承太郎の言うとおり、これで完全に車自体がスタンドということがわかったぜッ!」
ポルナレフ含めた全員は身構える。
今回は異例の乗り物の形をしたスタンド。しかも一般人にも見える。
ストレングスの時のように、妙な術を使うかもしれない。
「本体のスタンド使いは中にいるようだッ!」
オゴゴ カバァ
おんぼろの車体に光沢ができて、傷がみるみる消えていった。
「メッ…メチャクチャの車体がッ!」
「なんだァ~~っ。こいつは一体ッーっ。なおっていくぞ!まるで生き物だ!」
花京院とポルナレフはたまげている。
ピカアー
車はランボルギーニよりも馬鹿でかく、鋭利な鉄の武器を兼ね備えていた。
馬力がすごい敵の車のエンジン音が、その場の緊張感を掻き立てる。
「……ジョースターさん。後方に下がって、その子をお願いできますか」
「?」
由来は冷や汗を掻きながら、斜め後ろにいるジョセフに言う。
車はついに動き出し、承太郎へ向けて突進してきた。
先に喧嘩を振ってくるとはいい度胸だなと、承太郎は拳を構える。
「フン!力比べをやりたいというわけか……」
「やめろッ!承太郎!まだ闘うなッ!やつの『スタンド』の正確な能力が謎だ!それを見極めるのだ!!」
ジョセフの警告が承太郎の耳に届くよりも速く、承太郎の体のあちらこちらから血が吹き出た。
シュキィィン ボゴ ドバドバ
「ガフッ!」
『承太郎ッ!』
「ば…ばかなッ!み…見えなかった…いったい、なんだ今の攻撃は………!?何をどうやって撃ち込んできやがったのだ!?」
「ヒャホハハハッー。今の攻撃が見えないだと?!すぐに見えるさ!きさまがくたばる寸前にだけどなアァ!!」
敵の車は再び突っ込んできた。
『“白の陰影”(ホワイトシャドウ)!!』
シュギィィンッ!!
承太郎と車の間に氷の盾が瞬時に現れた。
敵の車スタンド『“運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)』は急ブレーキをかけた。
車の熱で暑苦しくなっていた空気が、一気に冷えた。
(これは由来の…!)
承太郎が助けられるのは2度目である。
そびえ立つ氷の盾を目の前にして、頭の中である言葉が過る。
“とても美しい造形だ”と。