第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「バカな。メチャクチャのはずだぜ」
ポルナレフは、車は大破したはずだから、中の運転手が操作できるわけがないと言う。
(承太郎…!これはまさか、“あの時”と同じ…!)
ガバッ!
由来は承太郎と目を合わせて頷き、意志疎通をした。どうやら、考えていることは同じようだ。
「いや、車自体が「スタンド」の可能性があるぜ。船自体がスタンドだった、『“力”(ストレングス)』のようにな」
香港から出航した後、遭難して出くわしたあの貨物船のことだ。
一般的なスタンドは、普通の人は見えない突拍子もない存在だが、車や船は日常生活で見かけてもおかしくない。
しかし、船=スタンドという突拍子もない事実。常識の思い込みによって、その根本的な部分で一本取られたのだ。
(スタンドはスタンド使いにしか見えない。しかし、たとえスタンド使いじゃあないアンが見えているとしても、前回と同様、乗り物のスタンドなら、あり得る)
承太郎と由来にとって、とても希有なスタンドで印象的だったから、両者ともに覚えていた。
そして敵は自身のスタンドの名を、はっきりとこう呟いた。
「『“運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)』これが……我が……スタンドの……暗示」
ドドドドドド
「なんだ…一体この地鳴りは?」
「なんかやばいぞ…」
緊張で高鳴る心臓の鼓動と不協和音を奏でているような感じがして、気味が悪い。
「みんな!車に乗りこめッ!」
「いや!乗るなッ!車から離れろッ!」
承太郎は鋭い勘で、ジョセフとは逆のことを言った。
「まさかッ!」
「地面だッ!」
ゴバッ ドゴオォーン
「うおおおあああっ」
地面から一気に何かが噴き出して、全員がバランスを崩して倒れ込んだ。
そして盛り上がった地面のところで、例の赤い車が姿を現した。
承太郎のスタープラチナに殴られ、ボンネットはへこんでいて、ボロボロなのに。
「バカな。地面を掘ってきたァーッ」
ポルナレフは叫んだ。
敵は姿を現した。戦いのゴングはなってしまったらしい。
(マズい……ここには“無関係の一般人”(アン)がいる。こんな時に…!)
由来は、後ろで怯えてた目をしているアンを垣間見る。
そして心に言い聞かせる。
子供は、なんとしても守らなくては。