第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
(もしこのまま突き落とすつもりなら、全員車の中でミンチになって事故死だ。私含めて)
それか、死体になった私を回収する算段か?
となると、私を生かしておく必要はないということか。
特別扱いされていないようでありがたい。
何せ、この中で最も先に犠牲になるべきなのは、今、身内が1人も残っていない、“私”だからな。
由来の顔つきが変わった。
敵に追い込まれる緊迫した状況でも、承太郎はその瞬間を見逃さなかった。
ギャルルルルル
ポルナレフは何とか押し負けまいと、車をフルパワーでバックさせるが、どうやってもビクともいかない。
「四輪駆動の車輪があっけなく空回りするだけだッ!うおおっ。も、もうだめだ!!みんなッ!車をすてて脱出しろッ」
『え』
ポルナレフはブレーキペダルを離し、シートベルトを外した。
「ポルナレフッ!ドライバーがみんなより先に運転席をはなれるか普通は…!?誰がふんばるんだ?」
花京院がそう言うが、時すでに遅し。
「えっ……ごっ……ごっご、ごめーん。ワァーッ」
抵抗を止めた四輪駆動は呆気なく押し負け、崖に転落してしまった。
「うわあああぁああぁっ!!」
落下した車の中はカオスになった。
重力がバラバラになり、どちらが上でどちらが下か分からない。平衡感覚が狂う。
吐き気を強く感じながらも、由来は後部座席の扉を開けた。
「何をしてるんじゃ由来!?」
ジョセフは帽子を抑えながら、声を上げる。
「外に出て、崖の下に積雪を敷きます…!クッションになって、少しは生存率が上がるはずです」
さっきのトラックとの正面衝突でも、瞬時に大量の雪を作り、衝撃を和らげた。
あれと同じことが出来れば、致命傷は避けられるかもしれない。
とにかく、敵と戦うことになるなら、致命傷はまずい。