第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
(スタンドのDISCとやらの一部が戻ったのか、体調は以前よりましになっているのは分かる。だけど、今のは……)
由来は手のひらをグーパーさせて、力の感触を吟味する。
「くそォ…あのボロ車。山道でデコボコなのに、やけにスピードが出るじゃねーか」
ポルナレフはさらに車を加速させて、そのボロ車を追う。
ブゥ~~ンッ!
加速するにつれて、車の揺れが激しくなってきた。
(………………うん。酔うな)
由来は船や電車に酔う体質であった。
今、敵と思わしき者を追っている緊迫した状況で、のんきに酔い止めの薬を飲むのはどうかと、葛藤した。
そして、外の空気を吸うために窓を開けたいのは山々だが、敵が何を仕掛けてくるか分からないのに、車内を露わにするのは危険だと思い、やめておいた。
由来は時と場をわきまえる性格であった。
ポケットには、酔い止めの薬がある。あと水だ。
(確か、さっきのカフェでペットボトルを買っておいたけど……あ、運転席と助手席の間に、置いてある……)
この車は四輪駆動で、車内は広いから後部座席と前の席には、かなり間がある。
私の腕の長さじゃ届かない。
ポルナレフさんは闘志を燃やして、運転している。隣の花京院くんは、地図で道と地形の確認をしてくれている。
水取ってくれる?と言いたいとこだけど、お取り込み中なら……
ヒョイ
「!」
左寄りの真ん中に座っていた承太郎が、ご自慢の長い腕でペットボトルを取った。
「ほれ」
それを、由来の目の前に差し出した。
「え……?」
「飲めるときに飲んでおきな。お前の能力は必要になる」
「……あ、ありが、と」
由来は受け取って、固いふたを開ける。
(この人。強面の割に意外と優しいことは知っているけど、ここまで人を気遣いするタイプだったかな…?)