第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
承太郎はハッとなり、弾丸が撃たれた方向を確認したら、例の車の中の誰かいた。
影になっているせいで、顔はよく見えなかったが、窓から腕が出ていて、銃を握っていた。
「奴だ!い、いつの間に車に乗り込んでやがった?!」
ポルナレフは憤りを込めた声を上げる。
男は車を発進させ、行ってしまった。
「誰かやつの顔を見たか?!」
ジョセフは皆に聞いたが、全員首を横に振る。車内が暗かったせいで、誰も顔を見れなかった。
「い、いえ。しかし、ジョースターさん。アイツは今、ジョースターさんに向けて発砲しました。もうこれは、ただのゴロツキってレベルじゃあないですよ」
花京院は言う。
「追っかけて、とっつかまえて、はっきりさせんことにはイラついてしょうがねーぜッ!さっきのトラックとの正面衝突のうらみもあるしなッ!」
運転していたポルナレフが一番イラついている。両拳を握り締めて、怒りのオーラをむんむん漂わせている。
ポルナレフが運転席に乗り込むに続いて、全員が車に乗り、イカレ野郎の後を追う。
スピードが出ていることで、後部座席ではかなり揺れる。
「由来。言い忘れていたが、ありがとう。お前がいなかったら、ワシは頭を撃ち抜かれていたわい」
ジョセフは承太郎を挟んで左隣にいる由来に声をかける。
「は、はあ……」
由来は間の抜けたような返事をする。
「だが、よく反応できのう?敵が撃ってくることに気付いていたのか?」
「……いえ。分かりませんでした。正直、私も、何が起こったやら…」
「?」
由来は頭を抱えてそう呟いた。明らかに自分のお手柄で1人の命を救ったというのに、全く自覚していないようだ。
皆が謎のイカれドライバー相手に怒りを覚えている中、1人だけ明らかに違う感情を持っている。
承太郎が口を開いた。
「……さっき、なかなかの反射神経だったな。お前のスタンド」
「!。ど、どうも…」
由来は自分の手のひらをグーパーして見下ろした。
この時の由来はまだ自覚していなかった。
記憶のDISCの一部を取り戻したことで、体に染み着いたかつての戦いの記憶が、無意識に由来に働きかけたという事実を。