第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
『!!』
直に鼓膜へ響くほどの甲高い音が、カフェテリアの中にいる全員に伝わる。
その中で承太郎は、弾丸がジョセフのこめかみに向かっていることに気付く。
「じじい!」
スタープラチナの速さなら、弾丸を掴むことは訳ない。
しかし、どこから発砲されるか把握していなければ、素速く反応できず、手が届かない。
(間に合わな…!!)
由来はジョセフが手付かずだったさとうきびジュースのグラス掴み、空中にぶちまけた。
「“白の陰影”(ホワイトシャドウ)ッ!!」
アンは銃声に驚き反射的に悲鳴を上げ、ポルナレフは反射的にアンの頭を抑えて地面に伏せた。子供と大人では防衛本能の仕方は違う。
花京院はとっさにスタンドを出して、防御の体勢に入る。
(何だ?!敵か…!)
銃が発砲されたということは、誰かが撃たれて負傷したに違いない。
花京院は、周囲を見渡すことに長けているハイエロファントを放ち、負傷者を探す。
「!。これは…!!」
しかし花京院は全く違う物を見つけた。
不自然な形をした氷の固まりが、ちょうどジョセフの前に転がっていたのだ。
その中には、複数の弾丸が埋め込まれていた。
「大丈夫ですか?!ジョースターさん!」
「あ、ああ……」
ジョセフは状況がよく飲み込めず、花京院の問い掛けに対して曖昧な返事をした。
花京院も、一体なにが起きたのかすぐには飲み込めなかった。
しかし1人だけ、承太郎だけはすぐに分かった。スタープラチナの素早さで“その瞬間”を目撃していたから。
(な、なんて奴だ。じじいがテーブルに置いていたジュースを弾丸に向けてぶちまけ、弾丸ごと凍らせやがった…!)
しかも一発だけじゃなかった。複数の弾丸を丸ごと凍らせるように計算して、ジュースをまき散らした。
そして全ての弾丸が空中のジュースを貫通した一瞬を狙った。
氷と化し重くなった弾丸は軌道を変え、ジョセフは怪我をせずに済んだ。
いくら弾丸より神経が速いとしても、並の人間業じゃない。
しかも由来は、片目を失ったばかりだ。