第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「由来!お前のホワイトシャドウの右目が…!」
ポルナレフが指でさした。
「スタンドと本体は肉体のダメージが連結していますからね。こうなって当たり前です」
「た、確かにそうだが……」
ポルナレフは動揺しているにも関わらず、当事者の由来は全くもって冷静でいる。能力通りだ。
「よりによって、視力を……」
「目が二つあるのは、どちらかが使えなくなっても大丈夫なようになるためだと思えば、問題ないですよ」
それは無口で控えめな彼女の割に、とても前向きな言葉だった。
「ようは捉え方の問題です。もし戦いに支障をきたすのであれば、私は一秒でも早く慣れるよう努力する。それに大事なことは、
・・・・・・・・・・・・・・・
これ以上失わないよう努めることだと思います。無いものを嘆いても何も変わりません。違いますか?」
「……あ、ああ。その通りだぜ由来」
ポルナレフの表情が柔らかくなった。
(そうだ。嘆いたって仕方ねェ。俺たちは、DIOを倒すためにここにいるんだ)
由来が片目を失った原因が俺にもあるとすれば、俺は俺なりに努めるぜ。
「ならスタンドを出して判断するのは俺がやるぜ」
「……分かりました。お任せします」
由来はホワイトシャドウを引っ込めた。
(由来の奴。前と少し変わったかのう)
ジョセフは彼女の僅かな変化に気付いた。
他人に任せることを覚えた。
何でも自分でやろうとするのではなく、無理をしなくなった。
ストレングスの時も、誰にも相談せずに独りでアンを助けようと行ってしまった。
インドでの戦いを経て、彼女は何か心に変化が生じたのだと、ジョセフは思った。
(とにかくいいことじゃ。これからの旅路には、今まで以上の強敵が現れるのは明白だ。チームワークも肝心になってくるからな)
内心そうやって頷いた。
ポルナレフはチャリオッツを出して、カフェテリアのテーブルとテーブルの間の通路をゆっくり歩く。
モデルがランウェイを優雅に歩くような姿を、少し離れた場所でジョセフ達は見守っていた。
(見たところ、目が泳いでいる奴や不審な動きをする奴はいなさそうだぜ)
ポルナレフは皆の方へ目配せしたが、ジョセフは首を振った。
やはり、不審な者はいないらしい。
その瞬間、銃声が鳴り響いた。