第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「由来!」
由来は寝起きにも関わらず、冷静に周りを見渡して状況を確認した。
「敵の襲撃ですか?それともただのトラブルですか?」
まるで110番のオペレーターのようにスラスラと聞いた。
「わ、分からんッ!急にトラックが現れて…いや!あの車が狙ってやったんじゃ」
その一方、承太郎は彼女の隣で唖然としていた。
(コイツ……俺よりも速く反応しやがった?)
スタープラチナで即座に衝突を受け止めようとしたが、それを上回る速さで防御した。
そして承太郎は、彼女の雰囲気が前とは何か違うことを察した。
冷気のせいなのか、以前と何か……
由来は車を覆っている雪を解除して視界を遮るものを消した。
目の前には大型トラックが止まっている。
中の運転手はのびていたが怪我は無さそうで、由来はほっと安堵の息を漏らす。
「どこじゃ!あの車はどこにいる?」
ジョセフは車の周りをくまなく見渡したが、さっきのいかれポンチとその車が見当たらない。
承太郎は冷静に言う。
「どうやらあのまま走り去ったらしいな……どう思う?追っ手のスタンド使いだと思うか?それともただの悪質な難癖野郎だと思うか?」
「追っ手に決まってるだろーがよォーッ!殺される所だったんだぜッ!」
運転席で間近に眼前したポルナレフの言葉には説得力がある。
「だが、しかし…今のところ「スタンド」らしい攻撃はぜんぜんありませんでしたよ……」
花京院の言う通り、敵スタンドなら普通では有り得ない未知の力で襲ってくるはず。
一体何なんだろうか。
「………あれ?何でこんなとこにいるの?」
「!」
由来はアンを二度見した。今更招かれざる客である彼女の存在に気付いた。
「ええ~と…これは……」
アンは目をそらしてごまかそうとするが、由来にまた嘘を付くのは後ろめたいので、真実を言うことにした。
本当は父親に会うためじゃなく、独り旅のために家出したことを。
「……」
由来はため息を漏らす。
「あの、その……ごめんなさい。あたし…」
「ちゃんとご飯食べている?」
「え?う、うん」
「そうか」
勝手に付いてきたことを咎めることなく、それだけ聞いた。