第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
成り行きでやむを得ず、少女を車に乗せることにした。
このままスルーしてもまたまとわりつかれるだろうから。
バッグから写真を広げたり、すごく馴れ馴れしくジョースター一行に話しかけるアン。
最初の警戒心や猜疑心はどこに行ったのやら。
「おねがいよぉ。つれてってェェーッつれてって!」
「だめじゃ!だめじゃ!だめじゃ」
アンは何度も旅の同行を頼み込むが、ジョセフはだめだと何度も繰り返す。
狭い車内は喧噪に包まれる。その中でも相変わらず爆睡している眠り姫が1名いる。
(やかましいぜ……)
うっとうしいのが大嫌いな承太郎は今すぐにでも大声を上げて止めたかったが、眠り姫を起こしたらまずいと密かに堪えていた。
しばらくしてアンだけのおしゃべりタイムとなった。
シンガポールで父親に会うという嘘を付いたのは、独りで旅をするのだと話した。
私は女の子だから何だかんだだとも言ったが、誰もアンに聞く耳を持たないため、彼女のそれは独り言と同じだ。
彼女のどうでもいい話を聞くより、いつ来るか分からない敵スタンドの攻撃に注意する方が有意義だ。
アンはようやく仮眠している由来の様子に気が付いた。
右目に眼帯をしている。
「あれ?由来さん右目どうしたの?」
「!」
ここでようやく皆はアンの話に耳を傾ける。
「それにもう一人いなかったっけ?えーと、アヴドゥルさんは……」
「……あぁ、それは、だな」
ジョセフがそう言いかけると、後ろからクラクションが聞こえた。
「さっき追い越した車だ。いそいでいるよーだな」
ジョセフはポルナレフに道を譲るよう言い、ポルナレフはハンドサインで先に行かせた。
しかし車はさっきと同様トロトロ走って、砂埃を起こしている。
とんでもなく迷惑ないかれ野郎だ。
「運転していたヤツの顔は見たか?」
承太郎はポルナレフに聞いた。
「いや…窓がホコリまみれのせいか見えなかったぜ」
「おまえもか…」
由来にも聞こうとしたが、今彼女は左隣でおねむの時間だ。
それに起きていたとしても片目では見づらいだろう。