第12章 クーリング ダウン
5人は車に乗り込む。ポルナレフは運転席に、花京院は助手席に座り、後部座席には右から承太郎、由来、ジョセフがいた。
由来は真ん中に挟まれる形で座っていた。
インドの一件もあり、外からの敵スタンドの襲撃に備え、一番安全な真ん中にいることをジョセフに強く言われたのだった。
(今までこんな密着して乗る乗り物はなかったからな……)
飛行機、船、列車、バス。どれも座席や空間が広く、ゆとりがあった。
だが今回は車。しかもジョースターさん並の体格の良い男性4人が乗り合わせているとなると、肩が狭い。
窓に目を向けても、夜だから真っ暗だ。窓を開けたいところだが、窓際に座ってないからできない。
由来はポケットから何か小さい物を出した。
「ん?」
花京院は助手席で首を後ろに向けて、彼女の持っているものに気付いた。
それは錠剤タイプの薬だった。
「一体何なんだいそれは?」
由来はスタンドを奪われていた。いや、今でもDISCにされて大半を失っている状態だ。
そんな状態で普通でいられるわけがない。薬はもしかしたらSW財団から支給されたものかもしれない。
しかしジョセフも心当たり無い様子で、自分と同じく不思議そうに彼女の持っている薬に目をやっている。
「……酔い止めだよ」
「え?」
「軽度だけど。乗り物にいる時は、遠くの景色を眺めていれば問題ないくらいだよ」
彼女が今まで、船や列車に乗っている時、会話を全くせず外の海の景色ばかりを嗜んでいた。
その理由は彼女の人見知りの性分だけではなかったらしい。
そして彼女はこの旅で初めて、乗り物の窓の景色を見ることなく、仲間との他愛のない話を嗜んだのであった。
腕の痛みも、己のスタンド能力への怖れも、無く。