第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
「おいポルナレフッ!荒っぽいぞッ!」
「へへへへ!さすが四輪駆動よのォーっ」
花京院がいつものように注意して、ポルナレフは相変わらずおちゃらけている。
そんな2人の後ろ姿を由来はぼーっと見ていた。
「おい、今小石はね飛ばしてブツけたんじゃあないのか!?」
「さあ。かもな」
「事故やトラブルは今…困るぞ。ヴェナレスの一件で追われる身だからのう。無事国境を越えたいわい」
エンプレスによりトラブルを起こされたジョセフは、もう懲り懲りらしい。
ウトウト
(ん?)
承太郎は左の彼女の様子に気付いた。
首が不自然な動きをしている。
前に倒れそうになると真っ直ぐに戻すのを繰り返している。瞬きも多い。
授業中に同じようなことをしている奴をよく見かける。
「眠いのか?」
「!」
由来は承太郎の問いかけに対し、ブンブン首を横に振った。
反対側にいるジョセフは、承太郎に続き由来に優しく言った。
「今は車の中でわしらもそばにいる。後で襲撃がありるかもしれんから、今寝る方がいいかもしれんぞ」
エンプレスの襲撃で寝泊まりは車の中で済ましていた。
こんな暑苦しい男ばかりの空間で、彼女が寝るのはやはり無理がある。
特に彼女の場合、スタンドがずっと不完全だったため命の危険に晒されていた。
そして数日前にようやく一部を取り戻し、体調も良くなったばかりで、病み上がりの状態だ。
いや、実際彼女は右目を怪我している。
もっと彼女の身体を労らなければと、ジョセフは今更思った。
「し、しかし、ポルナレフさんはずっと運転していますし。私が寝るのは……」
「俺のことは気にすんなよ!このポルナレフには、この中で一番タフさには自信があるぜ!寝れる時に寝ときな!」
ミラーを通じて由来に笑顔を向けた。
(しかし……敵が私を捕虜することが目的なら、本人が寝るなんて呑気すぎるのでは…?)
そう自問自答していても、人間は三大欲求の一つには逆らえない。
眠気はさらに増して限界が来た。
「…じゃ、じゃあ15 分…だけ……」
そう呟くと彼女は二呼吸ほどで眠りに入ってしまった。
(早ッ…!)
花京院は密かに思った。