第12章 クーリング ダウン
その夜、ジョースター一行がいるのはホテルの部屋ではなく、河原だった。
ことの経緯はこうだ。
ジョセフが虫さされの傷の治療を受けている際、“女帝”(エンプレス)のカードの暗示を持つスタンドに襲われた。
腕の傷はエンプレスが仕組んだもの。傷そのものが敵スタンドだったのだ。
そして全ては敵の思惑通りに運んでしまった。
治療を担当した医師が殺され、ジョセフは殺しの罪を被せられてしまった。
騒ぎを聞きつけた警官が駆けつけ、事態は一般人を巻き込むほどの大騒動となってしまった。
その中でジョセフは悪戦苦闘しながらも、長年で得た戦いのスキルと狡猾さで、何とか敵の動きを止めて倒した。
「「相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している」これがジョセフ・ジョースターのやり方。老いてますます健在というところかな」
戦いの年季の違いを見せつけた。
そして敵の正体は、ポルナレフがナンパしていたネーナという女性であることが判明。
しかも外見を美人にカモフラージュしていたらしく、本当の姿は醜いことも明らかとなった。
何とか敵は倒したものの、ジョセフは指名手配犯となり、泊まるはずのホテルもやむを得ず諦めることになった。
仕方なく車で先を急ぐことにして、今に至る。
「久し振りにベッドで眠れると思ったんだがね」
「じじいがドジをやって、警察に追われさえしなきゃな」
花京院と承太郎は旅の疲れを癒やす機会を逃してしまったことを嘆く。
「……」
由来は隣で特に何も言わず、川の流れをじっと見ていた。
この川は海に続いているんだなと、マイペースでいた。
「話を付けてきた。この車で行けるぞ。ポルナレフ。運転を頼む」
ジョセフは車のキーをポルナレフに投げ渡した。
しかしポルナレフは全く反応せず、鍵が髪の毛に刺さっても、じっと体育座りで落ち込んでいた。
自分が口説いた女が敵だったことより、美人じゃなかったことにショックを受けている様子だった。
「おい。まだショックを受けているのか。スタンドに襲われたのはわしじゃぞ」
「いっそ、そっちの方が良かったぜ」
(アヴドゥルさんの時とは違う意味のショックを受けている……)
由来はアヴドゥルの時とは違う意味で、気の毒に思った。