第12章 クーリング ダウン
(……DIOが彼女を付け狙っていることは知っている。それはやっぱり、彼女が殺すには惜しいほどの能力を持っているからなのか…)
花京院は彼女のことで色々気になることがありつつ、いたわりの言葉を送る。
「……君のやっていることはすごいし優しい。だが、SW財団の人たちも警護してくれているから、あまり…無理しないように」
「…お気遣いどうも」
「ここにいたのかお前ら」
「!」
人混みの中の会話に少し夢中になっていて、声をかけられるまで承太郎に気付かなかった。
「ジョジョ。あれ?ジョースターさんとは一緒じゃないのかい?」
「それが厄介なことになったらしい。じじいが行った病院だが、殺人事件が起きたらしく、警察が囲っていた」
『!』
花京院と由来は顔を見合わせた。
「え?じゃあジョースターさんとは会ってないの?」
由来は心配になり、承太郎に聞く。
「ああ。というより、じじいが容疑者にでっち上げられた」
「!?」
え?話が飲み込めないが。ジョースターさんが殺人の嫌疑がかかっている?
何かの手違いじゃあないのか?いや、まさか……
(敵スタンドに出し抜かれたのか?)
察しのいい由来は状況を飲み込めた。
「ジョジョ。とにかく、ジョースターさんに合流できるよう、人混みから離れた場所に一旦移動した方がいい。もし警察が動いているなら、ジョースターさんが予約した僕たちのホテルも、すでに調べがついているかもしれない」
ホテルにはもう戻れないことを、花京院は察した。
花京院はすでにハイエロファントを空に放ち、ジョセフの捜索に尽力していた。
ついでにポルナレフ女といたポルナレフのことも。
「ああ。ところで由来」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれ、思わず他人行儀になってしまった。
「片目がまだ慣れねェとこ悪いが、走れるか?」
「う、うん」
そして3人は冷静かつ迅速に移動したことで、後に2人に合流することができた。
由来は、前に花京院、後ろに承太郎と挟まれる形で、列になって共に走った。
ぶっきらぼうでも確かな優しさが込められた言葉が嬉しくて、彼の見えない角度で、由来は少しだけ笑みをこぼしていた。