第12章 クーリング ダウン
「あ、ありがとう。スタンドのことをそこまで…褒められるのは初めてだよ……」
(しかも女の子に…!)
花京院は顔を私の目から逸らした。赤面を見せまいと頑張っているのか。
何だか花京院の高校生らしいところを見られて、面白可笑しくて私はフッと笑った。
(きっとこの旅が終わった後でも、その優しさがあるなら、
・・
花京院くんならきっとやっていけるよ)
DIOを倒せば、洗脳された過去もきっと薄れていく。
何も思い悩む必要もなくなる。ただの高校生としての人生を歩むんだ。
私はこの時、その未来を疑いもしなかった。
「ん?あれ、ポルナレフじゃあないか?」
花京院が指差した先には、特徴的な白銀の縦髪をした男が。
見間違えるはずもない。わーポルナレフさんだー。
(あぁ。バス停で隣り合わせになっていた女性と楽しそうに歩いているな…)
女性の方は全く楽しそうじゃあないが。
よく異性にあんなグイグイ押し寄せることができるもんだ。
花京院くんや承太郎とは全く違うタイプだ。
これがカルチャーショック。文化の違いというものか。
そんなことを思いながら、私はポルナレフさんのことを何となく思っていた。
「……なあ由来。こういう時、君ならどうする?」
「というと?」
「知り合いとは思いたくないが、あの知り合いが楽しそうに浮かれている所を、君はそっとしておくかい?それとも、万が一スタンド使いの襲撃に備えて、合流して団体行動するかい?」
花京院は人混みの中にいるその男女を眺めながら、隣の私に問う。
「……私だったら邪魔しないな。ポルナレフさんも、前のアヴドゥルさんのこともあって、色々とショックを受けているようだから、ああやって少しでも気を紛らわせた方がいい」
私は花京院くんに意見を言った。
「……そうか。それもそうだな」
花京院はこの時由来の観察眼に感心させられた。
群れで戯れることなく、一匹狼のようにチームに参加している。
周りに無関心でいるようだが、実は人一倍周りを気にして、危険を察知すれば瞬く間に飛び込んでいく。
ストレングスの時でも。
「……ポルナレフは僕にこう呟いていたぞ。「俺が離れなければ、由来にも怪我を負わせることはなかったのかもしれない」と」
「!」