第12章 クーリング ダウン
その頃由来は、部屋でテレビを見ていた。番組は天気予報にしていた。
(しばらくは雨は降りそうにないか……)
私の凍らせる能力は、雨の日なら本来以上の力を発揮できる。雨に濡れた敵を一瞬で動きを封じるのは造作もない。
でも雨が降らないとなるとな。この先インドを超えて陸を進んでも、雨が豊富な場所なんてない。
私はそんなことを考えていたら、ふと思い立った。
(まさか、自身のスタンドの有利性について、ここまで考えるなんて……)
一時期、力のコントロールを教えてくれた人がそばにいたときは、不安は薄れてくれた。
だが私は、多くの人を殺しかねない自分の能力に怯えていた。
私の育ての親。私は兄と呼んでいたが、その人がいなくなってから、私はまた不安定になった。
今のように、いかに自分の力を最大限に引き出せるか、なんて考えることはあり得なかった。
私はテレビを消して、ベッドの上に仰向けになり、頭の後ろで手を組んだ。
コンコンッ
「?」
仮眠を取ろうかと思ったら、誰かがノックをした。誰だろう?
開けてみたら、花京院がそこにいた。
「何か用?承太郎から伝言とか?」
「あ、ああ。まあ、そうだな」
彼は何だかよそよそしい感じで、私はこの展開にとても見覚えがあった。
「承太郎はジョースターさんの検診のお迎えに言ったんだが僕に、「君と街に出かけたらどうだ」って提案してきて。一緒に街に出掛けないかい?由来」
パタン
由来は何の返事もせず、無言のままドアを閉めた。
「え?」
花京院は彼女の行動の意図が分からず、頭にもやがかかった気分になった。
彼女の氷の能力にかかったみたいに、しばらく動けなくなった。
(返答なしにドアを閉められた。これはつまり、NOということなのか?)
「ちょっ、兎神。どうしたんだい?僕、何か君に悪い気分にさせたかい?」
ドアを軽く叩いた。
ギギィ
由来は左目で外をチラッと見えるくらい細くドアを開け、花京院に聞いた。
「あんたは確か、私が唯一誕生日を教えた人物のはず。私の誕生日がいつだか覚えている?」
「はい?」