第12章 クーリング ダウン
ベッドの上に座り、両膝の上で両肘を立て、両手を組んでその上に顎を乗せて考えていた。
(承太郎。女性を邪険に扱う許せん奴だが、かの…由来に対しては、まるで別人のように優しく……)
この旅で、承太郎の心境に何か変化があったということか?
色々気になるが、とにかく引き受けてしまった以上すぐに行動しなければと、花京院は彼女の部屋へ向かうことにした。
一方、ジョセフがいる診療所へ向かっている最中の承太郎は、深刻そうな顔をしながら外を歩いていた。
「……」
ベナレスの地元民を通り過ぎながら、彼女のことを考えていた。
『私が物心ついたときには、母はそばにいなかったんだ。恐らく何らかの事情で私を手放した。だから、私が赤子のとき、実際母に何があったのかは知らない』
『…羨ましいです。そんな家族に囲まれて』
彼女は家族に恵まれず不自由な思いをしながら育ったのは、間違いない。
昨日、敵に色々と罵倒され、隠したかった自分の事情を仲間である承太郎に知られてしまった。
彼女はケガもそうだが、心に余裕があまりないかもしれない。
いや、ずっと昔から、すでになかったのかもしれない。
羨望とは、裏返せば"劣等感"。
今でさえ昨日の傷が癒えてないって時に、自分が恵まれていないことを
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さらに実感すれば、彼女はきっと……
だからこそ、一緒に来てもらうわけにはいかない。
だからこそ承太郎は、花京院にああ言って、彼女の同行を許可しなかった。
『じじいは
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身内だから、俺が行くのが筋ってもんだ。アイツを
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それに付き合わせるのはやめておく』