第3章 DIOの呪縛
不安な空気を和らげようと、由来はリンゴの皮を剥いてうさぎを作った。
「おお!ウサギさんか」
「ありがとう!由来ちゃんは女の子ね。料理もできて器用で」
ホリィは喜んでその一つをもらった。
由来は1人暮らしで、朝食の準備を手伝っただけあり料理もひとしきりできる。
家庭科の授業でよくやる桂剥きもできた。
ジョセフは空気を読むのがうまい彼女にまた感謝した。
「ウフフ。私には“一人息子”(承太郎)しかいないから、娘がいたらこんな感じなのかしら?」
「!」
今も高熱で、意識があるのもやっとのはず。
なのに、どんな人も和ませる天使みたいな笑顔。
どんなときも笑顔を絶やさず明るく振る舞う彼女を見て、由来は心が揺らいだ。
まさか、そんな状態にも関わらず、私をそんな風に…
・・
「今度こそはちゃんとおもてなししたいわ。だから、うちにいつでも気軽に来てね!承太郎とも同い年だし、あの子ともっと仲良くしてほしいから」
その今度は果たして…考えたくないけど…
「…はい。ぜひ」
ホリィに合わせて微笑んだ。
この時ホリィは思った。
あの子は、喧嘩や暴力沙汰になってもママには何も話してくれない
難しい年頃だし、パパも「男はそんな風になる」って言ってたけど、やっぱり少し不安だったわ
(でも、承太郎が女の子と肩を並べて…しかもこんないい子と…何だか安心だわ)
この子ならきっと…
それくらいホリィは彼女に信頼と期待を寄せていた。
そんな微笑ましい会話をしていたら、承太郎が台所から水を持ってきた。
「ありがとう承太郎。ほんとうにあたしったらどうしちゃったのかしら
急に熱が出て気を失うなんて…でも解熱剤でだいぶ落ち着いたわ」
さっきと同様に気丈に振る舞った。
(背中だからまだ自分になにが起こっているのか気づいていないようだな)
承太郎とは別に、由来はあることで悔やんでいた。
(やっぱりこの人…昨日も本当は体調が悪かったんだ)
でなければ、あんな高熱発症するわけがない
昨日も一緒にいたのにそれに気付けなかった…
「由来ちゃんもありがとう。風邪を引いちゃったのは歳をとったかしらね」
「いえ…最初見たときお姉さんかと思いました」
「アハハッ。由来ちゃんはお上手ね」