第12章 クーリング ダウン
「だが彼女は果たして行くかな。あまり外に出たがらないし、インドア派っぽいから。でも、単独はダメだと言えば付いてくるか……」
彼女は旅の目的を意識しすぎて、旅先を満喫しようとは思わない。人の命がかかっているからと重く受け止めているから。
だからシンガポールでも、偽物の花京院が来るまで、ずっと部屋にいようとしていた。
ちなみにそう言う花京院も、かなりのゲームオタクで友達とあまり遊ばず家に引きこもることが多い。
(だが、彼女は片目をやられてしまった。そんな状態でこのインドのゴタゴタした街中を歩くことは、かなりきついかもしれないな……)
「やっぱり彼女に悪いから僕もホテルにいよっかな」
「……俺はじじいを迎えに行く間、お前はアイツと街中を歩いたらどうだ?」
「!!」
まさかの2人きりで町中デート?ギャルゲーのシチュエーションか?
花京院は、あの承太郎がよりにもよってそんな提案をしてくることが意外すぎて、腰が抜けそうになった。
(僕は、君が普段女の子に付け狙われているような、そんな展開のギャルゲーは専門外なんだ!)
「?」
さっきから何をそんなに驚いているんだ?と、承太郎は花京院の思考がさっぱり読めなかった。
「アイツは片目にまだ慣れてねえ。戦うこともそうだが普通に歩くことも、ちと不安定だ。だから慣れさせる必要がある」
「あ、ああ。そういうことか…」
承太郎が言うことには一理あった。
敵と戦う前にできるだけ目を慣れさせる。この人混みの中だからこそ、いいリハビリになるかもしれない。
もちろん介助者も必ずつけてやることを前提としてだ。
「だったら、君がエスコートすればいいんじゃあないか。僕はこのホテルで待っているから?君にはどうしても外に行かなきゃいけない用事があるから、それで彼女を連れて行けばいいんじゃあないか?それか僕がジョースターさんと合流しに行っても」
「じじいは身内だから、俺が行くのが筋ってもんだ。アイツをそれに付き合わせるのはやめておく。俺のわがままみてえなもんだからな」
承太郎は花京院の目を見た。
「おめえ、俺をアイツと関わらせようとする癖があるが、何か企んでんのか?」
「え!いや…そんなつもりじゃ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ