第12章 クーリング ダウン
ドアを開けて、そこにいたのは承太郎だった。
相変わらずタッパがあり、ドアを開けた途端、195cmの頭は見切れている人が目の前にドンッ!といると、こちらもかなりビビる。
「どうしたんだい承太郎?」
承太郎はポルナレフとはかなり違って、気分などで愛想良く相手に話しかけるタイプじゃない。
ましてや、だべって親交を深めようと思う人でもない。わざわざ部屋に来るのは、何か理由があるのだ。
花京院も承太郎のそこんとこの性格を知った上で、要件を聞いた。
「今から俺はじじいと合流しに行く。もう診察は終わってる頃だからな」
やっぱり報告か、と花京院は思った。
「じゃあ僕はどうしようか。僕も一緒に行こうか?」
「それなら由来を連れていく必要がある」
「!」
え?承太郎?今……
「?」
花京院は驚いた表情になり、承太郎は顔をしかめた。
「何をそんな驚いてやがる?」
「あ、いや…その……承太郎が彼女を…名前で呼んでいるなんて知らなくて…」
意外とポルナレフと共通点があるものだな。女の子を名前で呼ぶくらい気楽なんて…
「……花京院。アイツのことをできれば名前で呼んでやれ。その方が向こうも楽だと言っていた」
「そ、そうなのか…」
承太郎は途端に彼女を“アイツ”“向こう”と言い直した。
もしかしたら、花京院に指摘されてこそばゆくなったのかもしれない。
「わ、分かった…慣れたら呼んでみよう。じゃあこの話は終えて、君が出かける話だが、僕も同行するとなると、彼女も連れて行く必要があるって話だったかな?」
花京院は、昨日承太郎が敵と対峙したとき体験した奇妙な出来事については、もう聞いていた。
彼女が、敵に勘違いの仲間意識を持たれているという話だ。
由来が昨日の敵はもちろん、DIOにも会ったことがないのは事実だ。
しかし敵はそれを否定した。お互いの言い分が矛盾していた。
敵が彼女を連れ去りたい一心の嘘か、それとも本当に、彼女のことを誰かと勘違いしているのか。
その真相を突き止めるために、彼女は旅を続けることになった。
だから彼女はこの先決して独りになってはいけないのだ。